「ヴァシュロン・コンスタンタン」とルーヴル美術館の美術工房が工芸展「ホモ・ファーベル2024」に共同出展

2024年9月1日から30日までヴェネツィアで開催された、職人たちの技術を讃（たた）える工芸展「ホモ・ファーベル2024」。同展に、「ヴァシュロン・コンスタンタン」とルーヴル美術館の美術工房が初の共同出展を果たし、過去に制作したタイムピースの修復を通じ、希少な文化遺産と技術の継承を讃えた。

修復技術をテーマに共同出展

そして今回、かなえられたのが、2024年9月1日から30日までイタリア・ヴェネツィアで開催された工芸展「ホモ・ファーベル 2024」への出展だ。「ホモ・ファーベル」とは、ジョルジョ・チーニ財団が支援する、職人技術を讃える工芸展。「ヴァシュロン・コンスタンタン」はかねてからホモ・ファーベルに参加してきたが、2022年の第二回に続き、ルーヴル美術館との共同出展を果たすこととなった。テーマとなったのは修復技術。ルーヴル美術館のキャビネットを修復する部門を招聘（しょうへい）し、1822年に家具職人ジャコブ・デマルテが制作したキャビネットの修復を試みた。オーク材にマホガニーを化粧張りし、ブロンズの上から金箔をアップリケしたこのキャビネットは、ルーヴル美術館にあるマリー・アントワネットやフランス王室の宝石コレクションを展示するために作られたもの。展覧会ではキャビネットが制作された19世紀の技法を受け継ぐルーヴル美術工房の家具職人たちによる実演も繰り広げられることとなった。

ルーヴル美術館のJewellery Room（現在の展示室661）で展示されていたキャビネット

同じくヴァシュロン・コンスタンタンもまた、過去に制作したタイムピースの修復作業を披露。ブースには1908年製のペンダントウォッチと1985年の「レディ・キャラ」が展示され、来訪者たちの目を奪った。いずれもメゾンのプライベートコレクションに所蔵されている、希少な品々だ。ギヨシェ彫りに半透明のエナメルをあしらったフランケ装飾が麗しいペンダントウォッチは、長い歴史の中で培われたヴァッシュロン・コンスタンタンの美意識を継承するもの。ローズカットダイヤモンドとプラチナのレースのアップリケが、時計が誕生した当時のアール・ヌーヴォーの文化をも薫らせる。そして「レディ・キャラ」は圧巻の輝きを。塊から削り出したイエローゴールドに120個、文字盤に15個のエメラルドカット・ダイヤモンドを配した、彫金とダイヤモンドセッティングの技が光る名品だ。かつ時計にはケース形状に合わせて、毎時19,800回振動のバゲット型手巻きムーブメントを搭載。メゾンのジュエリーウォッチを象徴する時計として受け継がれている。

「ホモ・ファーベル2024」で展示された1908年製のペンダントウォッチ

ダイヤモンドが美しくセットされた1985年製の「レディ・キャラ」

誕生当時の道具と時計製造技術を用いて修復

そして現在も多くの愛好家を持つ「アメリカン 1921」からは、アーカイブに保存されている、3つのタイムピースが展示された。クッション型かつ斜めの文字盤をもつ「アメリカン 1921」は、“狂騒の20年代”に登場した時計だ。その独創的なデザインから、ハンドルを握ったままでも時刻を確認できるドライビングウォッチとして知られているが、同様に聴衆演説の際にさりげなく腕に目をやるための牧師の時計として誕生したという逸話をも持つ。会場にお目見えしたのは、コレクション誕生の布石となった1919年の試験的なクッション型モデル、1921年に初めて米国市場向けに少数展開されたタイムピースだ。コレクション誕生100周年を迎えた2021年に制作したユニークピースである。ちなみにこの2021年に制作発表したユニークピースは、1921年に24本の少数生産となったオリジナルモデルを厳密に復刻したもの。メゾンの修復工房とヘリテージ部門が歴史を調べ上げ、誕生当時の道具と時計製造技術を用いて作られた。まさに、希少な遺産を継承していくという、メゾンの姿勢そのものを語る作品である。

1919年製の「アメリカン1921」。ごく少数のモデルが試験的に製作された