うつ・イライラ・不安感・不眠。更年期の症状として、こうしたメンタルに関わる不調が現れる人もいます。つらいときに我慢は禁物。原因や対処法を解説します。
正しく理解しよう! 更年期の症状
まずは女性の更年期症状について正しく理解しましょう。
主な原因はホルモン。
性格や環境以外に、栄養的な問題が隠れていることも
更年期とは閉経をはさむ前後5年間を指し、一般的に45~55歳頃までです。更年期は心身にさまざまな不調が現れることがありますが、主な原因は卵巣の機能が低下し、女性ホルモンの分泌が急激に減少するためです。
ほかに、性格や家庭、仕事などの生活環境も影響するといわれています。更年期症状の現れ方に個人差があるのは、ひとりひとり体質や性格、環境などが異なるためです。生活環境に強いストレスを感じる人は、更年期症状が出やすいと考えられています。
ホルモンの血液検査を受けて問題がないと言われていても不調が続く人の中には、妊娠中や産後から長年続いてきた、隠れた鉄欠乏性貧血を持っている方も少なくありません。
50代は閉経や子どもの自立、親の介護や死別など、身体的・社会的ストレスがいくつも重なりやすい時期であることを自覚し、体や心の変調に気を配りたいですね。
さまざまな身体的・精神的症状が現れる
更年期の症状は人によってさまざまです。具体的には、ホットフラッシュ(のぼせ)、発汗、冷え、めまい、耳鳴り、頭痛、動悸、息切れ、イライラ、不安感、不眠、うつ、無気力、肩こり、腰痛、関節痛、疲労感、かゆみなどの皮膚症状、腟の乾き、性交痛、頻尿、尿失禁など、多種多様な症状があります。
次章では、これらのうちメンタルに関わる症状を取り上げて対処法をご紹介します。
つらいときは早めに対処!
更年期症状のうち、生活に支障が出るものを更年期障害といい、治療が必要です。
厚生労働省の「更年期症状・障害に関する意識調査」によると、更年期症状を自覚しても医療機関を受診していない50代女性は78.9%となっており、症状を我慢している女性は少なくないようです。
しかし、つらい症状を我慢していると「生活の質(QOL=Quality of Life)」が低下し、心身の不調で仕事を辞めてしまうケースもあります。更年期障害の主な治療法はホルモン補充療法と漢方療法です。精神症状が強いときは向精神薬、精神療法、認知行動療法などが有効です。
更年期障害の多くは治療によって改善が期待できます。また、「更年期のせいかな?」と思っていてもほかの病気が隠れていることも。自分らしい生活を送るためにも、病気の早期発見のためにも、まずは気軽に相談できるかかりつけの婦人科をもちましょう。
参考サイト:「更年期症状・障害に関する意識調査」(厚生労働省)
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更年期のメンタル不調の対処法
更年期症状のうち、メンタルに関わる症状の対処法をご紹介します。
イライラ
更年期の症状として、ささいなことにイライラする、怒りやすくなるなど、怒りのコントロールが困難になる人がいます。
ある程度のイライラは誰にでもあることで、特に女性はホルモンの影響でこうした感情が起こりやすいもの。しかし、自分で感情をコントロールできず、生活に支障があるときは専門家に相談しましょう。更年期障害のほかにうつ病など、イライラに潜む病気があるかどうかを診断します。
病気が関与していない場合、ストレスケアのアドバイスやカウンセリングを受けることで心が安定する場合もあります。
うつ
気分が落ち込む、気力がない、物事に興味がない、ひとつのことに集中できないなど、うつ症状が更年期に現れる人もいます。
厚生労働省によると、女性は男性よりもうつ病になりやすく、うつ病患者数はすべての年代で男性より女性が多くなっています。発症には女性ホルモンの変化だけでなく、男女の社会的役割の格差なども関わると考えられています。
セルフケアとして、ウォーキングやヨガなどの有酸素運動が効果的とされています。うつ症状は早めに自覚できれば、うつ病の発症や重症化を防げる可能性が高まります。つらいときは早めに専門家に相談し、大事に至らないようにしましょう。
不安感
更年期によく見られる症状として不安感もあります。不安で心が落ち着かない、理由もなく暗い気持ちになるなどの症状が現れます。
セルフケアにはうつと同じく、ウォーキングやヨガなどの有酸素運動が効果的とされています。不安は誰もが体験するものですが、慢性的な不安があると生活の質が低下します。苦痛を伴うような不安感は、不安障害など他の病気の可能性もあるため早めに専門家に相談しましょう。
不安障害にはパニック障害や強迫性障害などいくつか種類があり、薬物療法やカウンセリングなど適切な治療を受けることで回復につながります。
不眠
不眠は加齢やストレスなどさまざまな原因が考えられますが、うつや不安感などの精神症状によって不眠が起こることもあります。また、不眠がある人はない人に比べてうつ病を発症するリスクが高いという研究報告もあり、不眠とうつ病の関連性が注目されています。
セルフケアとして、寝る前はカフェインやアルコールを避けて、入浴や音楽でリラックスする、寝る前にスマートフォンを使用しない、運動習慣をつくるなどがあります。症状がつらいときは正確な原因を知って対処するためにも専門家に相談しましょう。
(まとめ)
心身の不調はからだのSOSです。我慢したり、さらに無理を重ねたりすると症状がよくならないばかりか悪化してしまうことも。更年期障害かどうかに関わらず、つらいと感じたら早めの相談を心がけましょう。
構成・文/大人のおしゃれ手帖編集部 画像協力/PIXTA
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