日本水仙の栽培環境
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日当たり・置き場所
【日当たり/屋外】日当たり、風通しがともによい場所を好みます。日当たりの悪い場所では、花つきが悪くなったり、ヒョロヒョロとか弱い茎葉が茂って草姿が乱れたりするので注意しましょう。
【日当たり/屋内】一年を通して屋外での栽培が基本です。寒さにあわせないと開花しないことがあるので、必ず戸外で管理しましょう。
【置き場所】水はけ、水もちのよい、有機質に富むふかふかとした環境を好みます。暑さには強いですが、鉢栽培にしている場合は、夏は涼しい半日陰に移動するとよいでしょう。
耐寒性・耐暑性
日本水仙は寒さに強く、地植えにしたままで冬越しできます。開花を促すためにもしっかりと寒さに当てましょう。また、真夏の暑い時期は休眠するため、夏越し対策の心配はありません。ただし、鉢栽培の場合は涼しい半日陰で管理するとよいでしょう。
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日本水仙の育て方のポイント
用土
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【地植え】
植え付けの約2週間前に腐葉土や堆肥、緩効性肥料を混ぜ込んで、よく耕し、有機質に富んで水はけ・水もちのよい土壌を作ります。土に肥料などを混ぜ込んだ後にしばらく時間をおくことで、分解が進んで土が熟成し、植え付け後の根張りがよくなります。
【鉢植え】
市販の草花用培養土を利用すると手軽です。
水やり
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日本水仙に水を与える際は、株が蒸れるのを防ぐために茎葉全体にかけるのではなく、株元の地面を狙って与えてください。
【地植え】
下から水が上がってくるのでほとんど不要です。ただし、雨が降らずに乾燥が続くようなら、水やりをして補います。
【鉢植え】
鉢栽培では乾きやすくなるので、日頃の水やりを忘れずに管理します。土の表面が乾いたら、鉢底から水が流れ出すまで、たっぷりと与えましょう。茎葉がしおれそうにだらんと下がっていたら、水を欲しがっているサイン。植物が発するメッセージを逃さずに、きちんとキャッチしてあげることが、枯らさないポイントです。
夏は葉を落として休眠するので、水やりを控えます。冬は、十分に気温が上がった真昼頃に水やりをしましょう。夕方に水やりすると凍結の原因になるので避けてください。
肥料
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【地植え】
特に必要はありません。しかし、株の勢いがなく葉色が冴えないようであれば、液体肥料を与えて様子を見てください。
【鉢植え】
生育期は、チッソ成分が少ない液体肥料を2週間に1度を目安に与えます。また、花が終わったあと、球根を太らせる目的でカリ成分の多い液体肥料を与えます。
注意する病害虫
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【病気】
日本水仙に発生しやすい病気は、軟腐病やモザイク病などです。
軟腐病は細菌性の病気で、高温時に発生しやすくなります。特に梅雨明けから真夏が要注意。
球根や成長点近くの茎、地際の部分や根が腐って悪臭を放つので、発症したのを見つけたら、周囲に蔓延しないようにただちに抜き取り、周囲の土ごと処分してください。予防としては、連作を避け(同じ科に属する植物を同じ場所に植え続けないようにすること)、水はけをよくしていつもジメジメとした環境にしないことがポイント。また、害虫に食害されて傷ついた部分から病原菌が侵入しやすくなるので、害虫からしっかり守ることもポイントになります。
モザイク病はウイルス性の病気で、アブラムシやアザミウマ、コナジラミなどの虫が媒介して発症します。したがって、発症しやすい時期はアブラムシなどの活動が活発な春から秋にかけて。主に花や葉に被害が発生し、モザイク模様が現れます。症状が進むとウイルスの種類によっては葉などが縮れてきたり、湾曲して変形したりし、株の生育が著しく悪くなります。治療効果のある薬剤はないので、発症したら抜き取って土ごと処分し、周囲に蔓延するのを防ぎましょう。アブラムシ対策をしておくことが、発症を抑制することにつながります。
【害虫】
日本水仙に発生しやすい害虫は、アブラムシなどです。
アブラムシは、3月頃から発生しやすくなります。2〜4mm程度の小さな虫で繁殖力が大変強く、発生すると茎葉にびっしりとついて吸汁し、株を弱らせるとともにウイルス病を媒介することにもなってしまいます。見た目もよくないので、発生初期に見つけ次第こすり落としたり、水ではじいたりして防除しましょう。虫が苦手な方は、スプレータイプの薬剤を散布して退治するか、植え付け時に土に混ぜ込んで防除するアブラムシ用の粒状薬剤を利用するのがおすすめです。
日本水仙の詳しい育て方
球根の選び方
日本水仙の球根を購入する際は、球根がふっくらとして充実し、重みのあるものを選ぶとよいでしょう。
植え付け・植え替え
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日本水仙の栽培は、花苗店やホームセンターなどで販売されている球根を入手し、植え付けることからスタートするのが一般的です。球根の植え付け適期は、9月下旬〜10月です。
球根ではなく開花株などの苗を入手した場合は、早めに植えたい場所に植え付けます。その場合は、ポットから出した苗の根鉢を崩さずにそのまま植え付けましょう。
【地植え】
土づくりをしておいた場所に、深さ6〜10cmの穴を掘って球根を植えつけます。複数個を植え付ける場合は、10〜20cmほどの間隔を取りましょう。最後に、たっぷりと水を与えます。
【鉢植え】
5〜6号鉢に5〜6球の球根を目安に植え付けます。
用意した鉢の底穴に鉢底ネットを敷き、軽石を1〜2段分入れてから草花用培養土を入れます。水やりの際にすぐ水があふれ出すことのないように、土の量は鉢縁から2〜3cmほど下の高さまでを目安にし、ウォータースペースを取るとよいでしょう。深さ5cmほどの穴を掘り、鉢内で等間隔を取って球根を植え付けます。鉢植えの場合は、密に植えたほうが、花が咲いた時の見栄えがよくなりますよ! 最後に、鉢底からたっぷりと水が流れ出すまで、十分に水を与えましょう。
日常のお手入れ
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【花がら摘み】
日本水仙は花つきがよいので、終わった花は早めに摘み取りましょう。まめに花がらを摘んで株まわりを清潔に保つことで、病害虫発生の抑制につながりますよ!
【花後の管理】
日本水仙の開花が終わった後は、ニラに似た細長い葉が地上に残ります。「邪魔になるからしばっておこう」と、ひもなどで小さくまとめてしまう姿もしばしば見られますが、これはNGです! 日本水仙は花が終わった後に葉が光合成を行って、球根に養分を送って太らせることで、来年の春に再び花を咲かせるエネルギーにします。そのため、葉全体にしっかりと太陽の光に当てることが大切なのです。小さくまとめてしまうと葉に光が当たる部分が少なくなってしまうので、光合成が十分に行えず、球根に養分が送られずに来年に咲く花も充実しなくなるので注意しましょう。
【休眠・掘り上げ】
日本水仙は夏前になると葉が黄色くなり、地上部は枯れて休眠します。全体が枯れたら景観が悪くなるうえ、見映えが悪いので地際で刈り取りましょう。数年は植えっぱなしにしたほうが、球根が増えてその分株数が増え、花の数も多くなるので、見栄えがよくなります。しかし何年もそのままにしておくと、株が衰えてくるので、込み合いすぎているようであれば、掘り上げて分球し、植え直しましょう。「来春は別の場所で咲かせたい」という場合は、掘り上げて雨の当たらない風通しのよい場所で保存し、秋に植え付けてもかまいません。
増やし方
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日本水仙は球根植物で、地下の球根が分かれて増えていくので、掘り上げて分球し、増やすことができます。大株に育って込み合っているようなら、一度掘り上げてみてください。適したタイミングは、地上部が枯れて休眠に入る6月頃です。たくさんついている球根を分けて、ネットなどに入れて風通しのよい半日陰などに吊り下げて保存しておきましょう。9 月下旬〜10月の球根植え付け適期に、植え直します。
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日本水仙には毒がある
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日本水仙が属すヒガンバナ科の植物は、ヒガンバナアルカロイドという毒性物質を含んでいます。日本水仙の葉はニラやノビルに、鱗茎はタマネギに似ていることから、誤食して体調を崩すケースが報告されているので注意しましょう。見分ける点は、日本水仙の葉にはニラのような強いにおいがないこと、日本水仙の葉は中央が浅くくぼんでいる一方で、ニラは平たく厚みがあること、日本水仙には鱗茎があり、ニラにはないことなどです。家庭菜園を作っている場合は、ニラなどの近くに日本水仙を植えないようにし、事故を未然に防ぐ計らいも大切です。
日本水仙の花が咲かないときの原因と対処法
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日本水仙を植えたのに、咲かないという困りごとはありませんか? ここでは、日本水仙が咲かない原因や対処法についてまとめました。
主な原因
日本水仙の花が咲かない時は、以下の4つの原因が考えられます。
1.日当たりが悪い
日本水仙は、十分な日光を受けないと花芽が作られにくくなってしまいます。
2.肥料分が不足している
養分を吸収できずにいると、球根に養分を備蓄できずに花が咲かなくなってしまうことがあります。
3.花後に葉を切ってしまった
花後に葉を切ってしまうと、光合成不足によって十分に球根に養分が蓄えられず、花芽が作られなくなってしまいます。
4.球根が密集しすぎている
日本水仙の球根は、成長とともに球根が分球して増えていきます。植えっぱなしにして数年経つと大株に育ち、分球が密集しすぎることで株が衰え、花数が少なくなることがあります。
対処法
1.日当たりが悪い
日当たりの悪い場所で管理している場合は、日当たりのよいところに移動させます。春の開花頃には日当たりがよくても、季節が進むと同じ場所でも日陰になることもあるので、観察してみてください。鉢栽培でも、開花が終わったからといって日当たりの悪い場所へ移動せずに、休眠するまでは日なたで管理します。
2.肥料分が不足している
開花後に、お礼肥として株を回復させるために液肥を与えます。また、地上部が枯れて休眠するまでは、球根を太らせる目的で液肥を与えて様子を見てください。
3.花後に葉を切ってしまった
花後に花茎は切り取りますが、葉はそのまま自然に枯れるまで残しておきましょう。邪魔になるからといって、葉を切ったり、しばったりするのは禁物です。
4.球根が密集しすぎている
球根を植え付けてから数年が経っていれば、一度掘り上げて球根の整理をしましょう。
日本水仙は育てやすく初心者でもおすすめ
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日本水仙は一度植え付ければ、手間をかけずとも毎年開花を楽しめる、ビギナーにおすすめの植物です。花が咲いたら、芳しい香りを漂わせるのもいいですね。ぜひ庭やベランダに迎えてみてください。
Credit
文 / 3and garden
スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。