飲料メーカー大手のサントリーは11月7日、主力商品であるビールや缶酎ハイなど酒類約200品目を値上げすると発表しました。2025年4月1日から出荷価格を改定する予定で、缶ビールや缶酎ハイなどの家庭向け商品は4~11%の値上げになるといいます。今回だけではなく、このところビールは値上がりが続いていますが、その理由は何なのでしょうか。そして、いつまで続くのでしょうか。
サントリー、アサヒビールが値上げ
瓶ビール
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サントリーはビールや酎ハイなどの値上げを発表しました。看板商品のザ・プレミアム・モルツやサントリー生ビール、金麦などのビール類は4~7%上がる見通しです。ザ・プレミアム・モルツ(350ml缶)のコンビニでの店頭想定価格は現在の265円前後から277円前後に、金麦(350ml缶)は184円前後から196円前後に上がる見込みとなっています。
缶酎ハイでは、-(マイナス)196、こだわり酒場のレモンサワーなどを値上げ。-196(350ml缶)は150円前後から160円前後に上がる見通しです。
ビール類の値上げに踏み切るのはサントリーだけではありません。アサヒビールも10月22日、来年4月1日出荷分からの値上げを発表しました。スーパードライ、スタイルフリー、クリアアサヒなどの人気商品や贅沢搾り、GINONなどの缶酎ハイを中心に店頭価格で5~8%程度の上昇が見込まれています。
ビール類の値上げは今に始まったことではありません。最近では2022年10月1日出荷分からサントリー、キリンビール、アサヒビール、サッポロビールの大手4社がそろって値上げをしています。
値上げの理由は「包装資材を含む原材料価格の高騰に加えて、輸送にかかる物流費などのコスト上昇」(アサヒビール)「包材等の原材料価格および物流費等コストアップ」(サントリー)。ここ数年、日用品や食料品をはじめ、ありとあらゆる商品が値上げをしていますが、理由は大体一緒です。突き詰めると、どの企業も「原材料価格と物流費の高騰」を理由に値上げしています。
「原材料価格と物流費の高騰」という言葉に飽き飽きしている方も多いと思いますが、この機会に「なぜビールの値上げが続いているのか」を考えてみましょう。
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麦芽価格高騰の理由
麦
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値上げの理由の一つは、「原材料価格の高騰」です。ビールの原材料と言えば、麦芽。麦芽は大麦を発芽させたものですが、大麦の価格がまず高騰しています。
大麦の輸入物価指数は2020年12月が92だったのに対して、2022年10月は255にまで上昇。ここ1年ほどは下落傾向にありますが、それでも180~200といった値を示しています。
食品に関する業界紙・日本食糧新聞は2022年5月23日付の紙面で、この理由を「海上運賃の上昇や円安の影響で特に外国産の価格が高騰」と分析し、「前年と比べ7~8割上がっているとの声もある」としています。
円安は分かりやすい理由ですが、海上運賃はなぜ上昇しているのでしょうか。
海上運賃の上昇の一番の理由は、海上コンテナの不足。海上コンテナとは、規格サイズが国際的に統一されている海上輸送用のコンテナのことです。これがないと海上輸送ができません。
なぜ海上コンテナが不足したかと言うと、最大のコンテナ生産国であった中国が生産を制限したからです。現在、世界中で使用されている海上コンテナの大半は中国で生産されたものだと言われています。2018年に起こった米中貿易摩擦によって、中国からアメリカ向けの輸入品の需要が急減。それに合わせてコンテナの需要も下落しました。その影響で中国での海上コンテナの生産量が40%も減少しました。
その結果、2020年頃には輸送する荷物の量に対して、コンテナの供給が追い付かない状況に。需要の高まりによって、コンテナ運賃が大幅に上がり、それが海上運賃の上昇に繋がりました。
2020年に起こったコンテナ不足は未だに尾を引いており、2024年時点でも海上運賃の高まりは続いています。三菱商事グループの物流会社、三菱商事ロジスティクスは自社のホームページで「現在も海上輸送費の高騰が続いています。この状況がいつまで続くのか、いつ収束するかは、今は不透明な状況です」と今後の見通しを分析しています。