「自分の意思で排泄ができなくなった」自宅アパートから飛び降りた18歳女性。語った後遺症の現実と、家族への思い

 自殺で命を落とす者たちがいれば、未遂で生き永らえる者たちもいる。“死ねなかった”人々はどんな後遺症を抱え、その後どのような人生を歩むのか。彼らの声に耳を傾け、“生きること”の意味を考える。

◆“失敗直後”の女子大生を直撃。自殺は人を変えるのか……?

 自殺を図って間もない女子大生に話を聞くと、家族との関係が自殺願望に大きく影響することが見えてきた。

 通信制大学に通う立花莉奈さん(仮名・18歳)が自宅アパートの3階から身を投げたのは2か月前のこと。

 幼少期に兄から性的暴行を受けた影響で常習的にリストカットするようになり、親が離婚した高校時代には首吊りを図ったことも。

 そんな彼女の今回の飛び降りの原因もまた、信頼していた家族の裏切りだった。

「中学の頃からずっとうつ傾向があり、その辛さを吐き出してきたXのアカウントがあったんです。ただ先日、大好きな姉から『投稿、ずっと見てたよ』と連絡が。私の辛さを知ってたくせに、今まで手を差し伸べてくれてなかった事実がショックすぎて……。1週間後、『もういいや!』と、衝動的に飛んだんです」

◆「自分の意思で排泄ができなくなった」

 コンクリートに全身を強く打ちつけた立花さんは、通行人に発見され病院に運ばれた。

「骨盤を骨折した影響で膀胱直腸障害になり、自分の意思で排泄ができなくなった。看護師さんに摘便してもらうたびにみじめだし、この障害はあと何年も続く可能性があるって。私、まだ18歳なのに」

 だが、自殺未遂後、彼女の気持ちにはある変化があった。

「当日、病院に駆けつけてくれた母が泣きながら混乱している姿を見て、本当に傷つけてしまったんだなって。もし死んでいたら、こんなに私を大事に思う母と二度と話せなかった。だからもう絶対、この命を投げ出したくないです」

◆20歳女性「私はまた、やりますよ」

 一方で、ひと月前に自殺を決行したものの、「私はまた、やりますよ」と変わらぬ決意を口にするのは、関西の大学に通う新田莉央さん(仮名・20歳)。

 彼女の心に深く根づく希死念慮のきっかけは何か。

「物心ついたときから父は母をDVしていて、家には日常的に怒鳴り声が響いてました。しかも、母には『あんたがいるからお父さんと離婚できない』と恩着せがましく言われ続け、心が壊れてしまった」

◆家族との関係が引き金に

 人間不信に陥った彼女は、「わかってくれない人を全員殺したい」と思い、大学に包丁を持ち込んだ過去さえある。

「唯一の支えは、舞台や映画を何本も観て現実逃避すること。ただ、映像制作サークルで活動するうちに、作品の非現実感がだんだん薄れてしまい、何を観てもつまらなく感じるように。そしたら全部に嫌気がさしてきて、一人暮らしの部屋で、彼氏のネクタイで首を吊りました。恐怖はなくて、まるで日常の一コマ。でも、ネクタイが体の重さで切れてしまい、意識を失ったまま床に転がり落ちました」

 幸か不幸か、後遺症は残らなかった。

「私にとって自殺は“復讐”です。人生を壊した両親は殺したいほど憎い。でも法的に許されないから、せめて『あんたらのせいで私は死んだ』って傷を負わせたいんです」

 家族との関係は、時には命綱にも、自殺の引き金にもなりえるのだ。

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取材・文/週刊SPA!編集部

※1月21日発売の週刊SPA!特集「[自殺に失敗した人]が生きる人生」より

―[[自殺に失敗した人]が生きる人生]―