
こんにちは、シューフィッター佐藤靖青(旧・こまつ)です。靴の設計、リペア、フィッティングの経験と知識を生かし、革靴からスニーカーまで、知られざる靴のイロハをみなさまにお伝えしていこうと思います。
スニーカーは、黒色がやはり便利です。「ファッションの印象を整えるのはボトムス、印象を変えるのはトップス」だと考えると、足元がカラフルだと難易度は高く、黒であれば簡単に整いやすいからです。筆者も所有しているスニーカーの半分がオールブラックですが、私のように中高年になってくると、ひとつ間違えるとシニア靴に見えてしまうのが難しいところ。今回、ビジネスカジュアル、運動用、完全カジュアル、ハードな天候に合わせて、シチュエーション別に2025年1月現在のベストスニーカーをご紹介していきます。
◆ビジネスカジュアルの鉄板・防水もリペアもOK。パトリック「マラレイン」
ビジネスカジュアル用であれば、パトリックの「マラレイン」以外にありまません。スニーカーなのに、フォルムがクラシックで、天然革を使用しているので、革靴と同じように磨くことができます。ヒールが減ったら町中の修理屋で2000~3000円でリペアも可能。くわえて防水仕様で日本製と、欠点がありません。横幅こそタイトですが、本格革靴であってもジャストフィットしているものは往々にしてタイトな仕上がりです。
「ビジネスカジュアル=アッパーが黒、底が白」と安直に考えているメーカーも多いのですが、底だけが白い靴というのは意外と合わせるのが難しい。ビジネスカジュアルがOKな職場であれば、上品で無難、かつ実用的なマラレインでまちがいありません。
◆ガンガン歩けるビジカジならニューバランスの名作「2002R」
ジャケット不要など、もうすこしカジュアルでいい職場であれば、「履くと化ける系」のスニーカーも選択肢に入ってきます。足が痛くなりやすい、あるいはガンガン歩く方ならニューバランスの「2002R」。靴単体だとメカニカルなデザインに見えますが、不思議なことに履くと一気にドレッシーに化けます。15年前のガチンコのランニングシューズの復刻版ですが、シルクのような足入れの良さに頑丈なアッパー、ソールにはハイテク素材をこれでもかと詰め込み、長距離を歩いてもまったく疲れません。通気性も抜群なので日本の猛暑も問題なし。やたらにふかふかしているだけのハイテクソールは、逆に足が疲れますが、適度な反発感があり、しっかりと地に足が着いている感がわかります。
歩きをきっちり計算していて、一番はじめに摩耗していくカカトの外側はあらかじめカットされています。摩耗が抑えられるだけではなく、しっかりと地面を「面」でとらえることができるため、接地した瞬間がわからないほど。病みつき確定のモデルです。
◆軽い運動用ならミズノ。「ウェーブライダー28」はHOKAを超えた
軽い運動でも、カラフルなスニーカーは「ザ・運動靴」になってしまいます。しかし今はHOKAやOnといった人気メーカーは、のきなみ価格高騰&品薄が続いています。そこでミズノです。性能的には2万円超えのハイテクスニーカーと遜色がない「ウェーブライダー28」が熱い。
1997年からはじまった「ウェーブライダー」シリーズの最新版ですが、あらゆるパーツが前作から一新されました。アキレス腱をホールドするパッド、足首を圧迫しないベロの形状、ミズノウェーブに加え、クッション力が20%アップした「ミズノエナジーnxt」を搭載。断言しましょう。2万円超えのHOKAのクリフトン9より履き心地がいいです! オールブラックは幅広の4Eのみですが、ショップでもかなり売れています。
メリハリのついたボディで、押さえるところはがっちり押さえこんでケガを防止。その分思い切り底に衝撃が加わってもすべてを吸収します。28年続いているミズノの看板シリーズだけあって、プライドがバチバチに感じられる渾身の1足です。
◆すべてをオフにしたい日に。ハンズフリーのメレル
完全にオフの日には徹底的にだらだら過ごしたい方も多いはず。紐を結んで靴を履くのも面倒という方も多いでしょう。メレル・ジャングルモック2.0は、両手がふさがっていても「ズボっ」っと履くことができます。アッパーも超絶ミニマルなデザインで、いちいち服のコーディネートを考える必要がありません。おまけに従来のジャングルモックとは異なり、幅はそこそこ広いのにもかかわらずシャープなフォルムになっているので「休日のおじさん」感が皆無。ソールもビブラム社ですが、あの黄色いマークは裏にしか配置されていないので、悪目立ちもしません。ヒールの真下にかなり大きなエアクッションもはいっていて、足が痛い、ヒザが痛い方にも対応。ズボラな休日に救いとなる一足です。
◆悪天候ならトレラン一択。サロモン「スーパークロス4 ゴアテックス」
はげしい雨ならゴアテックスにすべて委ねましょう。サロモン「スーパークロス4 ゴアテックス」。サロモンの代名詞的モデルのひとつですが、ファッションと完全防水という実用性だけではなく、履くのがラクなんです。靴紐ってとにかく面倒なものですが、サロモンのクイックレース仕様は、ワイヤーを引き絞って、止めるだけ。しかも紐穴ではなく、ループの中をワイヤーが通っているので、どこにも食い込むことがなく心地よい締め付け感が得られます。正直これが1万7600円という値付けはややバグっているんですよね。そもそもトレイルランニング用なので、悪路でも平気で軽い登山までこなせます。サロモンといえばビジネスカジュアルに合わせる方も増えてきたので、すべてのシチュエーションに合わせられるチート級の1足とも言えます。
黒スニーカーというのは汚れも気にせず、それなりに足元も決まってしまうのでラクなものですが、ひとつまちがえると途端に「おじいちゃんの靴」になりかねません。靴屋に行った瞬間に迷子になってしまう方も多いので、オンなのかオフなのか、事前に用途をきっちり決めて買いに行くのがコツなのです。
【シューフィッター佐藤靖青】
イギリスのノーサンプトンで靴を学び、20代で靴の設計、30代からリペアの世界へ。現在「全国どこでもシューフィッター」として活動中。YouTube『足と靴のスペシャリスト』。靴のブログを毎日書いてます『シューフィッター佐藤靖青(旧・こまつ)@毎日靴ブログ』