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株価を押し上げてきたのはフェイクニュース?
今週金曜日には、米国で1月分の雇用統計が公表される予定です。市場予想は「15~17万人」程度と、堅調な数値が見込まれています。
今月は、1月分の雇用データとともに、2023年4月分から2024年12月分が遡及修正される年次改定値が公表されます。
米国の労働市場はこれまで堅調とされ、堅調な労働指標を背景に株価も上昇してきました。実際はそうではありません。
[図表1]の【青色の線】は昨年11月に公表された「同10月までの非農業部門雇用者数」の速報値です。サンプルによって推計されています。
他方の【オレンジ色の線】は、フィラデルフィア連銀が昨年12月に一足早く推計・予測した年次改定値です。分析時点で得られた最新のデータが※1が昨年6月時点までであり、同7月から10月分は同銀による推計値です。
※1 全米のほとんどすべての企業から集められる失業保険税(州税)の支払い記録に基づくものです。
これをみると、フィラデルフィア連銀による推計値【オレンジ】は、昨年11月当時に公表された速報値の水準【青】を大きく下回っており、米国の労働市場の実態は速報値で示されるほど堅調ではないことがわかります。
ここから言えることは4点あると筆者は考えます。
1. 株価は、正しくない情報で上昇してきた可能性がある(⇒【オレンジ】が毎月公表されていたと仮定する場合の株価はいまほど高くはなかったでしょう。現在の株価は、実体経済対比でみて割高になっている可能性があります)。
2. (フィラデルフィア連銀が使った)失業保険税に基づくデータによれば、昨年4-6月期の平均時給の伸びは4.2%と高く※2、米国の労働市場は停滞していても賃金の伸びは高く、踏み込んで言えば、現在の米国経済はスタグフレーションに近い状態である可能性がある。
※2 月次速報値で示された賃金の伸び率よりも高かった。すなわち、逆に言えば、月次速報値は「実態よりも雇用は良く、賃金インフレ率は鈍い」という2重の意味で、当時の株価にとっては都合がよい「正しくない情報」であった可能性がある
3. 今後、不法移民の強制送還が生じれば、雇用は回復するかもしれないが、その際にもやはりインフレがポイントになりそう。
4. 今までは「実態よりも強い雇用のデータが株価を押し上げてきた」可能性があるが、今後、公表されるデータは「実態どおりに鈍い」あるいは「実態の鈍さよりもさらに弱い」雇用のデータが示されても全く不思議ではない。
「米国経済は堅調」と決め打ちせず、今後の動向をしっかりとみていくべきでしょう。
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いまの価格より、今後の生産量を改善すべき
お米が見当たらないそうです。
1月24日付の日本経済新聞の記事では、24年産米の生産量は前年比で3%増えたものの、都内のコメ卸業者は「コメがどこにあるか分からず、不安感が先行している」と述べ、この背景としてJA幹部は「直販用や親族に渡すための縁故米を確保しようと、生産者が普段より多く手元に持っている可能性がある」とコメントしたそうです。また、東京地区のコメの卸間取引価格は2年前に比べて4倍超になっているそうです。
米騒動(1918年、大正7年)を思い出させます。当時の日本は、第1次大戦の大戦景気で成金が誕生したり、財閥(大規模な資本家)が力を持ち始めて、貧富の格差が広がり、庶民は生活に困窮し始めます。そこに関東大震災や世界恐慌が重なって、日本政府は満州を生命線と考えるようになります。「生活が困窮している」ところまでは、現状と重なります。
著名投資家のレイ・ダリオ氏はここ数年、「債務の拡大(プラス金融緩和の限界)、格差の拡大、新興の大国による覇権国への挑戦の3つが重なるときに、国内外で対立が激化して、通貨を含む覇権も交代する」と述べています。そうなれば、日本の安全保障や経済安全保障に大きな影響を与えます。
日本の地政学、そして国際政治力を考えれば、何をおいても、どんな対価を支払ってもコメなどの農産物の自給率(カロリー・ベース)を高めるべきでしょう。そして「どこかの国が助けてくれる」という考えは捨て去るべきでしょう。