2012年のワールドシリーズ・オブ・ポーカー(WSOP)で日本人初優勝を果たし、投資家としても大活躍している木原氏と、新進気鋭のエコノミストであり、日本ポーカーの祭典JOPTで2度の優勝経験を持つエミン・ユルマズ氏。本記事では、エミン・ユルマズ氏/木原 直哉氏による書籍『「確率思考」で市場を制する最強の投資術』(KADOKAWA)を一部抜粋・再編集して、投資のリスクとの向き合い方についてお伝えします。

投資のリスクとはどう向き合うべきか

木原:実は今、ある銘柄に過去最高額を投じて勝負に出ています。もちろん、この銘柄は伸びるという確信があるからですが、僕は基本的に分散投資をすることでリスクを管理しているので、ひとつの銘柄に投資する金額が大きくなるとちょっと怖いなと感じてもいます。

エミン:資金が少ない間はそんなに意識する必要はありませんが、運用資産が大きくなるほど、分散は重要になりますからね。

私は個人投資家に対しては、運用資産が1,000万円あれば10銘柄100万円ずつ、500万円以下なら5~7銘柄が上限だとアドバイスしています。100万円ぐらいなら3~5銘柄ぐらいがマックスでしょうね。資金が少ないのに分散しすぎると効率が悪くなってしまうから、上限を決めた方がいいと思います。

木原:僕も当初は300万円で投資をスタートしましたが、投資資金が大きくなってくると、よりリスクに敏感になり、分散を意識するようになりました。

たとえば手元に100万円あって、それを全部溶かしてしまったとしても、100万円だったら頑張ればもういちど貯めて仕切り直すこともできます。ですが、1億円を全部溶かしてしまったらさすがに再起できませんから。

エミン:資金が大きくなってきたからこそできる勝負もあるし、リスクを取れるという考え方もあるよね。そして、年齢や人生のステージによっても、リスクの許容度は変わります。20代や30代の人なら失敗したって何とかなるけど、定年間際の人はそうもいきません。

木原:若いからといって、必ずしもリスクを取れるわけではないんですよ。僕は子育て中なので、これから子どもたちにかかる費用を考えると、大きなリスクは取れません。

むしろ子どもたちが独立してお金がかからなくなる60代以降の方が、リスク許容度が上がるような気がします。あの世にお金を持っていけるわけじゃありませんからね。

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株式投資がポーカーより「ハイリスク」といえるワケ

エミン:ポーカー・プレーヤーはリスク選好型のイメージがあるけれど、投資のリスクにはずいぶん保守的なんですねえ。

木原:僕に言わせれば、株の方がよほどリスクは高いですよ。むしろポーカーで勝負することに対しては、ほとんどリスクは感じません。というのは、レートを上げると対戦相手のレベルが跳ね上がってしまうため、堅実に勝てるレートというのは自分の資産に対して大きくできないのです。

1日単位で見れば数百万円負けることは普通にありますけど、1か月ぐらい見ておけばほぼマイナスになることはありませんから。ポーカーはプロとして食えるレベルまで到達した後は、ローリスクローリターンといえるかもしれません。

エミン:私はかつて野村證券のサラリーマンでした。当時は労働環境が厳しくて体調を崩す人もいたけれど、それでも安定していたなと思います。やっぱり大きく稼ぎたいなら退職して起業するなり独立するなり、ダウンサイドのリスクを取らなきゃいけないわけで、それは仕事も株もポーカーも同じなんだよね。

エミン・ユルマズ
エコノミスト、為替ストラテジスト

木原 直哉
プロポーカープレーヤー

※本記事は『「確率思考」で市場を制する最強の投資術』(KADOKAWA)の一部を抜粋し、THE GOLD ONLINE編集部が本文を一部改変しております。記載内容は当時のものであり、また、投資の結果等に編集部は一切の責任を負いません。