「高額療養費制度」という言葉を一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。これは、医療費が高額になった際の自己負担額を一定額に抑えるための制度です。

この自己負担限度額が2025年8月から引き上げられる予定でしたが、政府は2025年3月に引き上げを見送ることを発表しました。見送りの背景には、負担増に対する反対意見の高まりが影響したと考えられています。しかし、この改正自体が撤回されたわけではなく、将来的には再び引き上げが検討される可能性が高いでしょう。

高額療養費制度とは

高額療養費制度は1カ月にかかった医療費の自己負担額が一定の金額を超えた場合に、超えた金額分が後から払い戻される制度です。これは高額な医療費を支払った時の負担を軽くするためのものです。

医療費の自己負担割合は年齢や所得によって異なりますが、一般的には3割負担です。しかし高額療養費制度を利用することで、自己負担額をさらに抑えることができます。ただし月をまたいで入院したり、通院治療で継続的に高額の療養が発生したりした場合は、医療費の計算は各月ごとに行われるため、各月ごとに申請が必要です。

例えば2月10日から3月10日までの1カ月間入院した場合、2月10日から2月末日までの医療費と、3月1日から10日までの医療費は、それぞれ別の月のものとして扱われます。そのため2月分と3月分の医療費が高額になっていれば、別々に高額療養費の申請を行い、それぞれの月で自己負担額を超えた分が払い戻されます。

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【現行制度】今の自己負担額は?年収別の上限額

高額療養費制度の自己負担限度額は、年齢および所得状況等により設定されています。下記の表は2025年3月現在の制度における69歳以下の自己負担の上限額とその計算方法です。

<69歳以下の高額療養費制度における自己負担上限額>


高額療養費のひと月の上限額試算表(年収別)

参照:厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ

上記の数式を元に試算をしてみましょう。

例1)年収500万円の会社員が3月1日から3月30日まで入院し、入院中の医療費が100万円だったケース

このケースでは「ウ」の計算式を使います。

自己負担額=80,100円+(1,000,000円-267,000円)×1%
     =87,430円

上記の例では100万円の医療費がかかっても、窓口での医療費の自己負担額は8万7430円となりました。食事代や差額ベッド代などは医療費に含まれないので、入院時の窓口での支払額はもっと高額になりますが、医療費の自己負担額が大きく抑えられていることがよく分かります。