
「なんかもう、何やっても叩かれる……えーん」
YouTubeチャンネル『よにのちゃんねる』内で、timeleszの菊池風磨は、二宮和也に対してそうぼやいていた。
Sexy Zoneからtimeleszへの改名、そして新メンバーを迎え8人組としての新体制が本格的に始動したばかりという状況の中、いわゆる「出る杭」「手のひら返し」のような状態に陥ってしまい、菊池はそんな状況に弱音を吐いているといった状況だ。
それにしても、ちょっと前までみんな、あんなに菊池風磨に夢中だったじゃん!? というところはある。
◆逆風の中で知名度を大きく上げた存在
菊池風磨には、旧ジャニーズ事務所所属タレントに逆風吹き荒れたここ1、2年の間に、そこをくぐり抜けながらもいわゆる〝ジャニオタ〟層でない一般層からの人気や認知度を爆上がりさせてきた印象が強い。
いわゆるキラキラ王子様系タイプではないこと、バラエティ番組のドッキリに引っかかり裸にされながらも笑いをとる体当たりぶりや反応のよさ、気さくなアニキ感も漂わせつつ、逆に目上の存在に対しては可愛らしく思われそうな悪ガキ感。
事務所周辺にまつわるセンシティブな状況が続いたなか、それらを武器に気づけばバラエティやCM、そしてドラマにと、引っ張りだこの存在となっていた。
そこに冒頭でも触れた、Sexy Zoneあらためtimeleszの新メンバーオーディションを、その模様を配信と連動させ展開するプロジェクト「timelesz project」が始動した。
◆流行語と同時にヘイトも生み出してしまった
オーディションは3人のオリジナルメンバーが中心となり進められたが、そこで菊池の名言が飛び出す。
「歌詞忘れてるようじゃ無理か。歌詞はね、入れとかないと」
Sexy Zoneの楽曲の歌詞が出てこないオーディション生に向けて、菊池がユーモア混じりにチクリと放った一言だ。これがSNSを中心に大きくバズり、「菊池風磨構文」と名がつき流行語化したことは、知る人も多いだろう。
しかし、その一方で、このオーディションがいくつかのヘイトも同時に生み出してしまっていたこともたしかだ。
旧ジャニーズ事務所といえば、ジャニーズJr.(現ジュニア)という制度のもと、少年たちが明日のデビューを目指し切磋琢磨していくストーリー性も、これまでのファンにとっては大切にしてきた部分であった。
そこにジュニア期間無しで(過去にジュニア経験を持つ新メンバーも存在するわけだが)一足飛びに「即デビュー」となると、それはモヤる人がいることはわかる。
また、新メンバーの発表とジュニア再編成のタイミングがかぶってしまったことがこの感情に追い討ちをかけることとなったことも事実だ。
さらに、だ。
◆本人の想定より大きくなってしまったファンの反発
冒頭と別の回の『よにの』では、timeleszメンバーを番組に呼んでみんなに紹介したいともちかける。
二宮は「いいんじゃない」と言ったものの、同じく『よにの』メンバーである山田涼介が「ダメ」と即却下したことが切り取られ話題となった。
ほかにもtimelesz新体制とジュニア新体制を同列で語ったことや、ことあるごとにtimeleszの話題を『よにの』内で持ち出すことも「『よにの』の私物化」と批判されたり、一部ファンからのさらなる反発を招いた。
そして、新メンバーであり、かつてのジャニーズJr.メンバーでもあった原嘉孝への「容姿いじり」をしたことも、炎上を招いてしまうこととなった。
もちろん、オーディションにあたって否定的な意見が出ることぐらいはデビュー14年目、百戦錬磨の菊池にとっては折り込み済みだったであろうが、それが想定よりも大きかったというのが計算以上のものとなり、冒頭の「何やっても叩かれる……えーん」という、どこか教訓めいた童話のオチのような状況を招いてしまったのだろう。
◆場の面白さ優先のノリ「一軍感」
菊池風磨がかもしだす、「いじめじゃなくていじりです」の理屈に近い、場の面白さ優先のノリ、一種の「一軍感」、そして「男社会感」は、現在の空気のなかではやはり反発を生むことも多い。
これまではそれらをねじふせるだけのユーモアや気さくな悪ガキ感という好感の貯金で乗り切れきたところ、ジュニアファン、そしてSexy Zone時代からのファン、さらには他グループの一部ファンといった、〝身内〟からの反発の強さは想定以上、その限界値の計算ミスが潮目の変わり目だったであろう。
もちろん佐藤勝利、松島聡の二人のオリジナルメンバーも同列にオーディションに関わっているのではあるが、菊池が場の空気を支配し、選考にも大きく力をもっていそうな雰囲気は、昔から見られた関係性だ。
2011年のデビュー当初は、松島や最年少メンバーだったマリウス葉(’22年末に卒業、その後退所)をいじりまくっていたことに傷ついていた当時の一部ファンの記憶を呼び起こすことにもつながった。
◆デビュー時から“大人の事情”に振り回されてきた菊池風磨
もともとSexy Zoneとは、荒波の連続だったグループである。当時のJr.内で人気の高かった中島と菊池の二人を既存グループから抜擢、そこにJr.歴の浅い三人を加えるという結成のいきさつがまずハレーションを起こした。
その後も〝Sexyファミリー〟という概念の導入による、メインメンバーと多数の有望Jr.を混ぜ合わせるような活動、松島・マリウスを外した3人組としての活動期間の存在、マリウスの休養、中島健人の卒業、今回の改名、そして前例のない公開オーディションの導入など、なにかと大人の事情のようなものにこねくりまわされ続けたグループである。
慶應出身の菊池は、元来とてもクレバーだろうと思う。
そこにこれらの歴史を乗り越え身につけてきた雑草のようなタフさが加わったこと、それが菊池の強さの源だという気がする。
◆timeleszの活躍次第で流れは変わるはず
近年の芸能界を見ていると、好感を持たれているタレントや俳優は好感度が高いほど、いったん流れが変わると元に戻すことは相当難しい。
とはいえ、当のtimelesz新メンバーたちは、バラエティや歌番組などでの露出によって、一般層への認知度や好感度を着々と上げてきているという事実があることもまた確かだ。
ネトフリで『タイプロ』は見ても、YouTubeの『よにのちゃんねる』までチェックする一般層は限られるだろうから、それらを取り上げるネットニュースなどを見ない限りは(この記事もそのひとつかもしれないが)菊池が叩かれていることも、それを「えーん」と言っていることも知らない人だってたくさんいるだろう。
timeleszの現時点での活躍は、もちろん菊池風磨個人の力だけのはずはなく、オーディションを通して培われた8人それぞれの努力の成果であるはずだ。
オーディションのこと、そして現在の新体制始動にともなう露出などを通して、好意的に見る層を増やし、いずれは今もモヤることで「えーん」とさせている層を納得させることができればいったんの「勝利」ではなかろうか。
『よにの』で泣きつかずとも、その頭脳とタフさがあれば、新体制もほどなく受け入れられ、なじみ、「やっぱり菊池風磨はおもしろいな」となる。そのときには、この「えーん」の経験が、さらなるタフネスを身につけることにつながっているだろう。
<文・太田サトル>
【太田サトル】
ライター・編集・インタビュアー・アイドルウォッチャー(男女とも)。ウェブや雑誌などでエンタメ系記事やインタビューなどを主に執筆。