マレーシアに開校したイギリスの名門全寮制インターナショナルスクール、エプソムカレッジ。そこでは、AI教育の積極的な導入や、寮生活を通して生徒同士が対等な関係を築く取り組みがなされています。未来のリーダー育成を掲げる同校の代表が語る、テクノロジーの活用と人間性の育成を両立させる教育の重要性とは? 柴田巌氏の著書『未来をつくるインターナショナルスクール経営戦略』(プレジデント)を基に、次世代人材育成の課題を紐解いていきます。

エプソムカレッジ・マレーシアの取り組み

インタビュー:マーク・ランカスター 

教育投資会社Edu8 CEO、エプソムカレッジ・マレーシア 代表
東南アジアでK‐12の教育機会を提供。教育投資会社CEO

エプソムカレッジは1855年にイギリスで創設された全寮制の寄宿学校で、主に医師の子息を対象とするインターナショナルスクールです。2014年にマレーシアに分校を設立しました。同校のマーク・ランカスター氏にポリシーやカリキュラムについてお話をうかがいました。

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使用を禁止した学校も多いなか、ChatGPTを採用したワケ

柴田

エプソムカレッジではテクノロジーをどのように活用しているのでしょうか。また、近年のAI(人工知能)などの発展を踏まえて、テクノロジーの価値をどのように捉えていますか。

ランカスター

2022年にChatGPTが初めてリリースされたときのことを覚えていますか? 教育関係者は大きな動揺と懸念を示し、実際に多くの学校がChatGPTの使用を禁止しました。

しかし、私たちはChatGPTを別の視点から捉えました。ChatGPTが登場したとき、私たちはイギリスのエプソムカレッジ本校と話し合い、「世界は変化しており、AIはさらに重要な位置を占めることになるだろう」という理由で、このテクノロジーを採用することを決めました。

AIは生徒の支援に使われるべきですが、人間が提供しなければならないもの、つまりAIでは提供できないレベルのインタラクションはまだまだ残されています。教師は学習方法を強化するツールとしてAIとその応用を理解する必要があると同時に、AIでは実現できないサポートを提供しなくてはなりません。

私がいつも尋ねられる質問は、「AIが学校に取って代わると思うか?」ですが、私はそうは思いません。

柴田

ランカスターさんの最後の言葉に私も完全に同意します。AIをはじめとするあらゆる種類の先進技術が表現できる可能性を否定することはできません。これはある意味で、人材、技術、情報、資金、学習の物理的環境を含む教育リソースの配分であると私は考えています。AIはこれらの要素の配分を少し変えるかもしれませんが、それら不可欠で基本的な要素の1つまたは2つに過ぎず、人間を完全に消去したり置き換えたりすることはできません。

したがって、AIをどのように活用するかを決定するのは、私たち人間次第です。エンジニアや教育者がAIの導入や使用方法を慎重に考え、適切に活用することで、AIは教育のサポートツールとして効果的に機能します。

しかし、AIは過去の人間の経験に基づいて学習するため、人間の判断力や感情、倫理に代わるものにはなりません。したがって、テクノロジーを受け入れつつも、教師や教育者が主導し、どのようにクラスルームやキャンパスでテクノロジーを活用するかを決めることが重要です。