2025年に入って、大阪ではバラバラ殺人事件が連続して発覚している。
冬に戻ったような寒さの3月19日の昼下がり。大阪市福島区の堂島川沿いの遊歩道にある植え込みで、通行人が肉の塊のようなものが入ったポリ袋を発見し、警察に通報した。
司法解剖の結果、遺体は男性、約10個の肉片は胸部や内臓の一部で、約20個の骨片は肋骨の一部であった。その他の部位は見つかっておらず、大阪府警では引き続き捜査を続けている。
キャリーバッグで死体を運んだ東大阪の殺人事件
2か月前の1月25日には、大阪府東大阪市と奈良県生駒市の境にある山中で、頭部や両手足などが切断された男性の遺体が見つかる事件が起こった。男性は衣服を身につけておらず、周辺の捜索でも服や所持品は見つからなかった。
2月3日、大阪府警は死体遺棄容疑で無職・大木滉斗容疑者(28)を逮捕した。逮捕後、大木容疑者の住居近くにある、廃虚となったマンション敷地内で残りの頭部が見つかった。大木容疑者は、男性を遺棄したことを供述している。
その後の調べで、被害者は国土交通省職員の神岡孝充さん(52)と判明した。大木容疑者は24年12月27日、同じマンションの別の階に住んでいた神岡さんの首を絞めて殺害。
12月28日に遺体発見現場から約600メートルの場所でキャリーバッグを持って山中の現場方向へと向かう人物が、25年1月10日ごろには大阪市内のコンビニエンスストアのATMで神岡さん名義のキャッシュカードを使って現金を引き出している男が、それぞれの防犯カメラに写っていた。府警はこれらの人物を大木容疑者とみている。
容疑者には当時、借金があったことなども判明しており、金銭目的の犯行とみられている。
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「猟奇的」よりも「仕方なくバラバラ」が多い
なぜ、犯人は死体をバラバラにするのだろうか。
2023年に札幌市・ススキノのホテルで起こった殺人事件のように猟奇性を感じる事件もあるが、基本的には死体を始末して事件を隠ぺいしたい、という動機がほとんどだろう。バラバラにすれば証拠=死体を隠しやすく、運びやすくなるし、被害者も加害者もわかりづらくなるからだ。
監察医として数多くの死体を解剖して事件解明に協力してきた法医学者の上野正彦氏は、かつて著書『死体は悩む』(角川oneテーマ21)で、近年のバラバラ殺人増加を踏まえ《これを猟奇性とばかりつなげて考えるのは間違いであり、生活環境の変化による部分も少なくない》と書いている。
とくに都会では、一軒家から集合住宅が増えている。庭などに死体を埋めていたようなケースでも、マンションなどでは埋める場所もない。だから仕方なく死体を損壊して、どこかに埋めに行かなくてはならなくなる、ということだ。
一見、猟奇的なように感じられる犯行でも《短絡的な発想というよりはギリギリの心理状態がそうさせているのである。(中略)追いつめられたときには(犯人に)保身の心理が働いて、普段であればできないようなことをやれる場合も多いのだ》(前出)という。