ギリシャでは海運業が盛んですが、その理由の1つには海運業に対する法人税の優遇税制があります。通常22%の法人税が、ギリシャ船籍の船舶については免税となり、代わりに「トン税」が課される仕組みです。ノルウェーやデンマークでも船会社に対する優遇税制が採用されています。国際課税研究所首席研究員の矢内一好氏が、外国の海運業と税制について詳しく解説します。

ギリシャの海運業

ギリシャは国土面積が131,957平方キロメートル(日本の約3分の1)、人口は約1,067万人(2021年)のEU加盟国です。2010年以降、財政危機に陥り、EU各国からの支援を受けましたが、2018年に10年におよぶ債務危機を脱しました。その背景には、ギリシャにおける納税意識の低さが指摘されていました。

一方で、ギリシャの船舶の積載量ベースの保有割合(2021年1月現在、国際貿易開発会議出典)は17.6%で世界第1位です。また、積載量ベースでは中国や日本を抑えて首位に立っています。

また、別の統計(出典:UNCTAD「REVIEW OF MARITIME TRANSPORT」2017年9月)では、船舶を実質的に保有する船主のランキングは、第1位ギリシャ(船腹量3億900万トン)、第2位日本(2億2,400万トン)、第3位中国(1億6,500万トン)とされています。

ギリシャの海運業では、アリストテレス・ソクラテス・オナシス(1906~1975年)が有名ですが、世界的な規模の船舶を保有しながらほかのEU諸国から援助を受けるという現実はアンバランスといえます。

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ギリシャの法人税

ギリシャの海運業が盛んな原因の1つが法人税の優遇税制です。通常の法人税は22%ですが、ギリシャ船籍の船舶については法人税が免税され、代わりに「トン税」が課されます。