京都・御所南に佇むデザートコース専門店「Ensoleille(アンソレイユ)」。パティシエの杉江さんが生み出す一皿は、まるで季節の物語を紡ぐような芸術作品。3月〜4月のテーマは「冬から春へ」。冬の名残を感じる食材と、春の訪れを告げる素材が見事に調和し、驚きと感動を生み出すコースが展開されました。

食材の組み合わせはどれも意外性に満ち、ひと口ごとに新たな発見がある——そんな唯一無二の体験ができる「Ensoleille」を紹介します。

カウンターで味わう、特別なデザート体験 ——「Ensoleille(アンソレイユ)」

京都の「出町柳」駅から歩いて5分。街中にひっそりと佇む「Ensoleille(アンソレイユ)」は、2020年にオープンしたカウンタースタイルのデザート店。店名はフランス語で「ひだまり」を意味し、その名の通り、温かな空間で心地よい時間を過ごせるお店です。

入り口をくぐると、アンティークのサイドボードや温かみのあるランプシェードが迎えてくれます。特に目を引くのが、店内の至るところに飾られたドライフラワーや、ガラス作家・神永朱美さんの繊細な作品。ほんのり緑がかったガラスの器が、提供されるデザートをより一層引き立てます。

お店のスタイルはユニークで、基本は11品のデザートコース(完全予約制)。その季節の食材に合わせたアシェットデセール(皿盛りデザート)が提供され、特別なひとときを堪能できます。

一方で、「もっと気軽に楽しめる日があってもいいのでは?」という思いから、予約不要の「パフェ営業日」も設けられています。どちらの営業日になるかはInstagramで発信されているので、訪れる前にチェックをお忘れなく!

オーナーパティシエの杉江綾さんは、もともと町のケーキ屋さんやホテル、レストランなど、さまざまな環境で経験を積んできた方。「カウンター越しでお客さまと会話するのが楽しかった」という原体験から、今のスタイルを選んだそうです。京都でのシェアキッチン営業を経て京都に出店した背景には、地元・滋賀の魅力を伝えたいという想いも。お茶やお皿は、滋賀のものが並びます。お店で使われるフルーツは、開業前に懇意にしていた和歌山の農家さんから仕入れたものが中心です。メニュー表には農家さんの名前も記されています。


ドリンクも自家製!

「今はスーパーに行けば何でも手に入るけど、果物や野菜には本来“旬”がある。それをもっと知ってほしい」と杉江さん。農家と直接やりとりしながら、その時々のベストな素材を取り入れるスタイルは、まさに“季節を味わう”デザート体験です。

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「冬から春へ」—— 季節を映す、驚きと発見のデザートコース

この日いただいたのは、3月後半から4月初めまでのデザートコース。テーマは「冬から春へ」。冬の名残と春の訪れを感じさせる食材を組み合わせた、まさに今しか味わえない特別なコースです。メニュー表に書かれているのは、シンプルに「メイン食材の名前のみ」。どんな料理なのかは、目の前に出てくるまでのお楽しみ。視覚・嗅覚・味覚すべてを刺激する驚きとワクワク感が詰まったコースでした。

1皿目:まさかの鮒ずし!?の飯(いい) × オリーブ × 白味噌のアミューズ

まさかの鮒ずしの「飯(いい)」を使ったファーブルトンと、白味噌を混ぜたブリュレ。発酵の旨みにオリーブを加えています。ケークサレのような塩気と甘みのバランスが絶妙で、アミューズのような一品です。

2皿目:菜の花 × ハッサク × レモンは春の訪れを感じるレモンタルト

菜の花の緑の部分とハッサクをレモンクリームで和えたものをサクサクのパートシュクレに入れて、菜の花の花が飾られています。柑橘の香りと爽やかな酸味が広がり、ほどよくほろ苦さが広がり、春の息吹を感じる一品。

3皿目:本みりん × 甘夏 × 黄ビーツは「甘い&苦い」を感じる大人の味わい

なんと本みりんを使ったパルフェ(アイス)! みりん×キャラメル×甘夏のソースと、甘夏&黄ビーツの果肉を合わせ、繊細な飴細工で飾られています。みりんのコクとビーツの土っぽい香りが、キャラメルのほろ苦さと絡み合い、大人の味わいに。

4皿目:清見オレンジ × 人参 × 菜の花は、複数の香りが混ざり合う新感覚スープ

菜の花のブリュレに、清見オレンジと人参の果汁を温めたスープを注ぎ、仕上げに「マーガオ(馬告)」というスパイスを散らして。温かいスープがブリュレをほどよく溶かし、甘みと苦味、スパイスの香りが混ざり合う不思議な味わい。

5皿目:ふきのとう × 女峰苺は食感も面白い、美しい一皿

メレンゲで作られた筒の中に、ふきのとうのアイスが! 苦味のあるアイスに、塩気のあるクランブル、サクサクのフィヤンティーヌ、そして苺の甘酸っぱさが加わり、驚きの美味しさ。「ふきのとうのアイス!?」と最初は驚くものの、一口食べたら感動もの。

6皿目:桜 × 女峰苺 × 白味噌では、洋風“桜餅”を楽しめる

関東風の桜餅を洋風にアレンジ。桜の葉を使ったアイスに、白味噌クリームと苺、生クリームを包んだ桜色のもちもち生地。さらに、桜の花を閉じ込めたゼリーがトッピングされています。一緒に食べると、まさしく桜餅の味わい! ほんのり塩気のあるアイスがクセになります。

7皿目:ハッサク × 清見オレンジ × 乳清の爽やかな口直しグラニテ

ハッサクと清見オレンジの果汁に乳清(ホエイ)を加えたグラニテ。口直しにぴったりのさっぱりとした味わい。ハッサクのつぶつぶ食感が楽しく、噛むほどに爽やかさが広がります。

8皿目:原了郭の黒七味はピリピリ刺激的な焼きたてフィナンシェ

最後は、黒七味を混ぜ込んだ焼きたてのフィナンシェ。外はカリッ、中はふんわり。七味のピリッとした刺激が後から追いかけてきて、甘じょっぱさとスパイスの香りがクセになる逸品。これ、クセになりそう!

小菓子3種もこだわり尽くし、何が出るかはお楽しみに

最後に登場したのは日替わりの小菓子。この日は自家製パート・ド・フリュイ、苺のバターサンドなどが並びました。パート・ド・フリュイのシュガーまで自家製で、「甘すぎないように」と細かく調整されているというこだわりっぷり!

一皿ごとに「こんな組み合わせ、想像もしなかった!」という驚きが詰まったデザートコース。

「コースだからこそ、思い切ったチャレンジができるし、お客さんも私も“冒険”できるのがいいところかなと思っています」

と杉江さん。料理人や農家との交流の中で得たアイデアを、お皿の上に表現しているのだそう。普段は食べる機会がない野菜や素材も、彼女の手にかかれば立派なデザートに変身します。

「食べる前は“えっ?”って思うような組み合わせも、一口食べたら“なるほど”って納得しちゃう」

そんな発見に満ちた時間が、「Ensoleille」には流れています。