日本には、国民の生活を支えるさまざまな制度がある一方、その制度について知る機会はあまり多くなく、知っている人だけが得をする仕組みになっています。今回は税理士法人グランサーズ共同代表で税理士・公認会計士の黒瀧泰介氏が、国や自治体が教えてくれない「申請しないともらえない」手当金を8つ紹介します。

補助金や助成金は、「申請」しないともらえない

――国や自治体から受け取れる補助金や助成金って結構あるみたいですね。

黒瀧氏(以下、黒)「そうですね。補助金や助成金は申請しないともらえないので、どういったものがあるのかあらかじめ把握しておくことが重要になります。今回は、知らないと損をする補助金や助成金について紹介します」

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病気やケガで4日以上休んだときに使える「傷病手当金」

1.傷病手当金

黒「まずは傷病手当金です。傷病手当金は病気やケガで働けず、十分な給与を受け取れないときに受け取れます。傷病手当金を受け取るには、特定の条件を満たす必要があります。要件は下記のとおりです。

傷病手当金の要件

・業務外の要因で病気やケガをした

・連続する3日間を含み、4日以上仕事に就けなかった

・最後に休業した期間に給与の支払いがない

まず、傷病手当金が支給されるのは、業務外の要因で病気やケガをした場合に限られます。業務上や通勤時に起きたことで病気やケガをした場合は、傷病手当金ではなく労災の給付対象になるので注意しましょう。また、美容整形などのように、病気とみなされないものについては支給されません」

――業務中のケガなんかは、労災に申請する必要があるんですね。

黒「はい。そして、連続する3日間を含み4日以上仕事に就けなかったことも条件となります。



[図表1]待期3日間の考え方 出典:全国健康保険協会

有給休暇や土日・祝日等を含めて3日連続で仕事を休んだ事実がないと、傷病手当金を受け取ることはできません。たとえば2日休んで1度出社し、そのあと2日休んだとしても傷病手当金の受給対象外になるので注意が必要です」

――ケガや病気が長引くときは思い切って休んだほうがいいということですね。

黒「このほか、最後に休業した期間に給与の支払いがないことも条件になります。給与が支払われている場合は、傷病手当金が支給されないので注意が必要です。ただし、給与の支払いがあっても、傷病手当金の額より少ない場合は、その差額を受給できます」

――なるほど。受給額はどのくらいなんですか?

支給額は1日当たり、支給開始日以前の12ヵ月間の標準報酬月額の平均額を30日で割った金額の3分の2となります。支給期間は支給を開始した日から通算して最長1年6ヵ月です。

〈傷病手当金の1日あたりの支給額〉

過去12ヵ月の標準報酬月額の平均額÷30日×3分の2

――病気やケガが長引いて給与を受け取れなくなったときはぜひ利用したい制度ですね。