ヒトサラ編集長の食ダイアリー~とっておきの旅と食のはなし~vol.3|台湾 その④

編集長・小西克博が最近気になったお店を、語り下ろし形式で紹介していく連載企画です。舞台は引き続き、台湾。ハイエンドからストリートフードまで、“旅のおとも”にしたくなる情報が満載です。

今回ご紹介するお店〈台北〉

  • 【世界豆漿大王】(豆乳スープ)
  • 【燕山湯圓】(白玉スープ)
  • 【老楊在二樓 私廚牛肉麵】(幻の牛肉麺)
  • 【GREEN BAKERY 綠帶純植物烘焙】(ビーガンカフェ)
  • 【RAW】(台湾最強のイノベーティブ・レストラン)



朝、文昌宮周辺を散歩しました。朝食に選んだのは雙連朝市にある豆漿店【世界豆漿大王】(住所:台北市林森北路310巷27号)。

鹹豆漿(シェントウジャン)の有名なお店です。鹹豆漿とは豆乳をお酢で豆腐状に固めたスープのこと。器にお酢と具を入れて温めた豆乳を注ぎ入れれば完成。シンプルだけどヘルシーな感じのする台湾朝食の名物のひとつですね。揚げンの油条(ヨウティヤオ)は欠かせませんが、この揚げパンがヘルシーなのかどうなのかはいつも疑問です。でもおいしいからね。これがないと締まらない気もするし。



もうひとつ、近くなので行った【燕山湯圓】(住所:台北市中山區民生西路45巷9弄12號)。
客家料理の白玉(湯圓)のスープですね。白玉の中にいろいろ具が入ってて、スープはさっぱりしてますが、そこそこボリューム感もあるので、これ一品で朝ごはんでもいいのかも。

そして昼はちょっと珍しいところへ。

【老楊在二樓 私廚牛肉麵】(住所:台北市松山區新中街9號)という牛肉麺を出してくれるお店なのですが、普通のマンションの一室がその場所という、ちょっと知る人ぞ知る的な(笑)。

こういうお店って時々あるんですよね。自宅のダイニングに招いてもらってる感じで、いい感じに和めて。



で、牛肉麺ですが、これがさすが素晴らしい。澄んだ美しいスープに細いめの麺がからみ、普洱茶で煮込んだという牛肉が柔らかく味わい深く、これもなかなか味わえないラーメンです。

メニューはそれ一つのみ。リビングダイニングにテーブルがひとつあって、そこを何人かで囲んで食べるのですが、わたしは台北の食通レディーたちと一緒になり、彼女たちの評価も高かったです。

店を出ると周りはニューヨークのグリニッジヴィレッジあたりを髣髴とさせるようないい感じのエリアで、素敵なカフェもあったので入ってみました。【GREEN BAKERY 綠帶純植物烘焙】。卵や乳製品は使わずにオーガニック食材だけでつくるヴィーガン洋菓子店です。コーヒーとチョコを少しいただきました。

そしてディナーは【RAW】(住所:台北市中山區樂群三路301號1樓)。
今回の旅のメイン、アンドレ・チャンさんの引退となる食事会です。

【RAW】が台北にオープンして10年。アジアのイノベーティブ・シーンに多大な影響を与え続けてきた彼も、これからは料理アカデミーをつくって後進の育成にあたるのだとか。

台湾で一番予約が取れないお店と言われて10年。そういえばさっきの牛肉麺の店で一緒したご婦人たちもそんなこと言ってた。それでも彼はいったんこの店は閉めて次のステージに行くと言います。



入口ではこの店のヒストリーが展示され、誘われるままにレストランに入るとなんとシャンデリアにテーブルクロス付きのテーブルが用意され、彼が学んだフランス料理のクラシックな世界に来たような気になりました。

ディナーは「ラストダンス」というタイトルになっていて、アンドレのヒストリーがそのまま料理となって出てくる構成になっていました。アンドレは何度もテーブルに来てくれて、細かく説明してくれました。スタッフの動きも無駄がなく、世界のトップレストランとしての矜持は健在です。

なかでも自分がフランスで修業を始めたときイモばっかりむかされてた時のハンブルな(つつましい)記憶だと出されたお皿など、その逆の可憐な美しさに包まれていて、相変わらず洒落がきいてるなと感心した次第。

全体がオペラ仕立てになっていて、フィナーレにはすばらしい夜となりました。