
マイホームに庭が欲しいと思っても、敷地条件や費用面であきらめてしまう人もいるでしょう。実は、建物の構造を工夫することで、庭のある暮らしを実現できるかもしれません。本記事では平松建築株式会社・代表取締役の平松明展氏の著書『住んでよかった家 理想の暮らしがずっと続く15の空間』(KADOKAWA)より、「コの字形の家」という特殊な構造を選択したことで、庭を手に入れた事例を紹介。初期費用がかさんでも「コの字型の家」にしてよかった理由を、設計のポイントとともに探ります。
快適な暮らしの基盤、日当たりを「コの字形の家」で手に入れる
建売住宅の場合、住宅会社によっては窓の位置や大きさを変えることができるかもしれませんが、それによって日照条件を大幅に変えられるわけではありません。たとえば住宅密集地に家を建てる場合、1階にほとんど陽が差し込まないこともあります。2階にリビングなどの生活拠点を設けるのも1つの方法です。
これとは別に構造自体を変更して1階に日差しを取り込む方法もあります。たとえば、真四角の構造ではなく、コの字形の建物にした場合、空間が生まれます。この空間によって日照条件が大きく変わります。
なお、日照シミュレーションは家づくりには必須です。性能に関わるだけでなく、生活のしやすさにも大きく関係してきます。日当たりのよさを追求するだけでも大きな意義がありますが、その際に間取りを工夫して生活の利便性や豊かさもセットにして考えたいものです。
特殊な構造にするには初期費用がかかります。その分、日射以外のメリットも増やしていけば、費用対効果が高くなるのです。条件のよい土地の購入費用と比較しても、お得になるケースがあります。
コの字形の構造によって手に入れたこと
左右を住宅に挟まれ、南側は道路に面しています。駐車場を設置するので庭のスペースを設けるのは難しいという敷地条件でした。そこで提案したのがコの字形の構造です。これによりスペースが生まれます。すると、太陽が高い位置にある時間帯はここに日が差し込むのです。白い壁にすることで反射力が高まります。採光を確保できたことで、北側にダイニング、南側にリビングを設置しました。
さらにあいたスペースをウッドデッキ(中庭の代わり)にし、ダイニング、リビング、また東側に設置した階段のところからも窓外の景色を眺めることができます。ウッドデッキを挟んでダイニング、リビングが見通せるため、広々とした空間を演出できました。ウッドデッキには、3方向からアクセスできます。その上にあたる部分はバルコニーです。ひさしによって雨が降り注がないというメリットもあります。日当たりを求めることで庭つきの戸建てになり、室内からの眺望も生まれ、生活の利便性まで高めることができました。
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1.窓外の眺望を楽しめるLDK
北側のダイニング、南側のリビング、また東側の階段越しにキッチンからも庭(ウッドデッキ)を見ることができる。3面が窓になっているため、空間が広く見える効果も。防犯、プライバシー確保も叶えている。