“ゆとりある老後”を奪う子・孫への援助
公務員や退職金制度を設けている企業の会社員は、定年退職時に「退職金」が支給されます。金額は勤務先や勤続年数などによって異なりますが、平均額はおおむね以下のとおりです。
[図表]定年退職金の金額(区分別) 出所:内閣官房内閣人事局「退職手当の支給状況」総務省「令和6年 給与・定員等の調査結果等」厚生労働省「令和3年賃金事情等総合調査報告書」東京都産業労働局「中小企業の賃金・退職金事情(令和6年版)」より著者作成
これだけまとまった資金があると、「子どもが困っているなら少し援助してあげよう」と考える人も多いでしょう。
しかし、援助が続くと、自分たちの老後資金に影響が出る恐れがあります。退職金は自分たちの老後生活を支える大切な資金であり、使い道は慎重に検討したいところです。
“ゆとりある老後”は、いくらあれば実現できる?
では、生涯必要な老後資金はどの程度なのでしょうか。
総務省「家計調査年報(家計収支編)2024年(令和6年)結果の概要」によると、65歳以上の夫婦のみ無職世帯の平均的な実収入は月25万2,818円でした。一方、支出は月28万6,877円で、毎月およそ3万4,000円の赤字が生じています。
この不足額を年額に直すと、約40万8,000円。仮に65歳から90歳までの25年間このまま生活した場合、約1,020万円足りない計算です。
さらに、公益財団法人生命保険文化センターによると、旅行や趣味などを含めた「ゆとりある老後生活費」は月39万1,000円とされています。
この水準で生活する場合、年金収入との差は毎月約13万8,000円。これが25年間続くと、必要となる資金は約4,140万円です。
一家の「その後」
こうしたデータを踏まえると、トシさんの資産は6,000万円あるとはいえ、子どもへの援助が続けば、ゆとりある老後生活に影響が出る可能性があります。
親として、子どもが困っていれば助けてあげたいと思うのは自然なこと。しかし、援助を続けた結果自身の老後資金が枯渇してしまっては本末転倒です。老後資金とのバランスを考えながら、無理のない範囲で援助を行う必要があります。
家族で話し合い、援助のルールを決めたトシさん
息子とお金との距離感に悩んでいたトシさんは、「このまま曖昧な状態を続けるのはよくない」と妻に相談。改めて家族で集まる場を設け、今後のお金のことについて話し合うことにしました。
そして、自分たちの老後資金の見通しや、これからの生活にどれほどの資金が必要になるのかを率直に伝えました。そのうえで、子どもへの援助についても「どこまでなら対応できるのか」という上限を提示したそうです。
最初は戸惑っていたタケシさんでしたが、両親の真剣な態度にこれまでのような“おねだり”は通じないと悟ったのか、最終的には理解を示してくれました。
その後は、それまでのようにお金の話を持ち出すことも減っているそうです。
辻本 剛士
神戸・辻本FP合同会社
代表/CFP
