
夫の死後、義母との同居や介護をどうするか――悩む人は少なくありません。「縁は切りたい、でも生活は守りたい」。58歳女性が選んだ決断とは? 遺族年金や相続への影響も含め、FPの三原由紀氏が詳しく解説します。
四十九日の納骨で気づいた「一緒の墓に入りたくない」58歳妻の決断
「どうして気づかなかったの……あの子、具合が悪かったんじゃないの?」
夫の葬儀を終えて数日後のことでした。義母(84歳)は由美子さん(仮名・58歳)にそう言いました。突然の言葉に、何も返すことができませんでした。
「私のせいなの?」
これまで十数年、同居する義母(要介護2)の介護はほとんど由美子さん一人が担ってきました。食事や通院、夜間の対応まで、日々の負担は決して軽くありません。
夫は「仕方ないよな」と言うばかりで、介護に関わることはほとんどありませんでした。悪意があったわけではないと思います。ただ、「見て見ぬふり」ができる立場に、ずっといたのです。
それでも「家族だから。夫がいるから続けられる」と思っていましたが、その支えは突然なくなり、責める言葉だけが残りました。
そして、四十九日の納骨の日。骨壺が納められていく光景を見ていた由美子さんの中で、ある思いが浮かびます。
「いずれ私もここに入るのだろうか。義母と、夫と、同じ墓に」
このまま義母との関係が続くのであれば、死後も「家の人間」として同じ墓に入ることになります。それまで漠然としていた違和感が、そのとき初めてはっきりした形になりました。「無理だ」――。
法要を終えて数日後、由美子さんは義母と義姉の前で、家を出る決心を切り出しました。すると、義姉がこう口を開きました。
「は? どういうこと? お母さんはどうするの?」
「お義姉さんのお母さまですし、これからはご家族で支えていかれるのがいいのではないでしょうか」
「なにそれ……責任放棄ってこと? じゃあ、あの子の保険金は置いていくんでしょうね。それで母の面倒を見るのが筋でしょ」
保険金についても、すでに自分の中で答えは決まっていました。こうしたやり取りの中で、由美子さんの頭に浮かんでいたのは、数日前に長男から聞いた“ある制度”のことでした。
「縁を切るなら年金はもらえない?」多くの人が誤解している制度の実態
きっかけは、独立して暮らす長男の一言でした。
「お母さん、“死後離婚”ってできるらしいよ」
最初は半信半疑でしたが、調べていくうちに「姻族関係終了届」という手続きの存在を知ります。配偶者の死後、義理の親族との関係を法的に終了させる制度です。
ここで多くの人が不安に感じるのが、お金の問題です。義姉が口にしたように、「縁を切るなら財産や年金は受け取れないのでは」と考える人は少なくありません。
しかし実際には、遺族年金は亡くなった配偶者との関係に基づく権利です。義理の親族との関係とは切り離されており、姻族関係終了届を提出しても受給権が失われることはありません。また、相続についても、配偶者としての権利は死亡時点で確定しているため、その後に姻族関係終了届を提出しても影響はありません。
由美子さんの場合、遺族年金として受け取れるのは年間およそ150万円(月額にすると約12万5,000円)です。決して余裕のある金額ではありませんが、65歳以降は自身の老齢基礎年金と合わせて年間170万円前後(月14万円程度)になる見込みです。
なお、この手続きをしても、子どもと義理の祖母との関係が変わるわけではありません。あくまで配偶者本人と姻族との関係に限られます。
それでも迷う人が少なくないのは、制度として可能でも、気持ちとして許されるのかという点で揺れ動くからです。こうした感情が、「わかっていても行動できない」状態を生み出してしまいます。
それでも由美子さんは、関係を見直したいと考えるようになりました。
