
ごく平凡な専業主婦が、100億円の金茶碗(きんちゃわん)を強奪!?――。実話に着想を得たコミカルなエンタメ作『黄金泥棒』で、田中麗奈さんが主演を務めました。映画のこと、女優業への思い、田中さんに聞きました。
実話から着想したリアリティと、ジャンプ力のある展開が魅力

「普通がいちばん」と教える母に対し、「いつか特別な人間になりたい」と思いながら大人になった美香子(田中麗奈)。専業主婦になり、なにひとつ不自由のない夫との暮らしに、どこか満たされない思いを抱く……。ある日訪れたデパートで金(きん)の仏具、おりんを盗んでしまう。金(きん)に魅せられた美香子は、100億円の秀吉の金茶碗(きんちゃわん)を盗む計画を立てる――。田中麗奈さんはそんな美香子を、表情豊かに表現しています。
「美香子は天然なところがあって、独特のマインドを持つ身近なキャラクターです。最初はなにを見ても感動しないし、内から湧き上がるものもない、まるでもやがかかった状態。孤独感もあり、日常がかすんで見えているんです。いつの間にか平凡という型に自分を押し込んでいて、その状態から、彼女自身の人生を取り戻すまでを描いているのかなと。実際にあった事件というリアリティと、秀吉の茶碗を盗むという展開への‟ジャンプ”も魅力的です。しっかりとエンタメになっています」
ぼんやりと生きていた主婦が、金(きん)のおりんを手にしたことで心にトキメキを取り戻す。田中さんは、そんな美香子とご自身に通じる部分があったと話します。
「私は、5歳から女優さんになりたくて。小学校も中学校もずっと、女優になることを想像して生きていました。そして、進路を決める時期にいただいたオーディションが『がんばっていきまっしょい』で。だから、もし夢が叶わなかったら? と思うと、美香子と重なるところがあります。女優という仕事につくことができましたけれど、子どもが生まれたとき、子育てをする毎日は幸せではあるし、一生懸命にがんばっているけれど、このままお仕事をいただけなくなったらどうしよう?という焦りや閉塞感を覚えたことがあって。ちょうどコロナ禍で人と会えなかったりして、余計にそう感じてしまったこともありますが、そのときの自分の心情とも重なりましたね」
普通の主婦が泥棒をしたら……?

この映画の撮影にあたり、田中さんは、萱野孝幸監督や共演者と本読みをして備えました。
「萱野監督は‟オードリー・ヘプバーンの『おしゃれ泥棒』や、グレース・ケリーの『泥棒成金』と、50~60年代のアメリカ映画のようなクラシックでゴージャスな映画になったらいいね”と。物語は前半と後半で展開やスピード感が変化するのですが、実は後半のアクションに備えて、助監督さんが美香子となり、実際のロケ地でカメラを回して、‟こんな風に撮影します”という動画を用意してくださいました。わかりやすい、なんて優秀なチームだ!と。共通認識があったおかげで撮影もスムーズに進みました。、私は動くのが大好きなのでアクションシーンも楽しみでした。本当にたくさん走りました(笑)」
完成した映画を観て「ちょっと観たことのない映画かも」と感じたそう。
「普通の主婦が泥棒をしたら?という、リアリティと、エンタメとのバランスが絶妙で。コメディだけれど笑いはシュールで、ヒューマンドラマでもあります。新しい感触の映画に出させていただけたことが嬉しかったですね。映画を観ながら、自分の本音に触れるようでもあって。自分にも美香子のような部分がないかな?と問いながら、自分と重ねながら観ていただいても楽しいかもしれません」

