
投資の三原則といえば、「長期・積立・分散」です。しかし、「長期」といっても、ただ長く保有し続けるだけでは、思うように資産が増えない可能性があります。その背景には、ちまたにあふれる「投資本」や、個人投資家との“前提条件の違い”が潜んでいるようです――。中野稔彦氏の著書『株をやるなら逆指値』(フォレスト出版)より、投資の元手が少ない個人投資家が実行すべき「3つの法則」をみていきましょう。
「長期投資」は金持ちの投資手法
投資の本質は「株式の確保」ではなく、「資金の確保」
「投資」は極めて単純な仕組みです。「安く購入したものを高く売却する」「高く売却したものを安く買い戻す」この差額を獲得し、差額を積み重ねることで、投資資金を増やします。
大事なのは「投資資金」を増やすことが「投資」の本質だということです。多くの人は株式投資とは、株式を保有することと思っているように見受けられます。しかし、それは大きな間違いです。「投資」の成果は「投資資金」に比例します。同じ投資をしても、「投下資金」が多い人の方が当然ながら成果が上がります。
仮に、年間の目標投資成果を500万円にしたとします。1億円の投資資金がある投資家は、5%の利益で達成できますが、1000万円しか投資資金がなければ、50%の利益を求める必要があります。しかも、1億円で損失を抱えても、投資資金が多額であるためリカバーする手法も多々あります。そもそも、それほどリスクの高い投資をしなくても済みます。何せ、5%の利益を達成すればいいわけですから。
しかし、1000万円ではそうはいきません。株式投資では、よく「BUY&HOLD」という言葉が語られます。「長期投資」ともよく言われます。もちろん、1度保有したら、数年、あるいは十数年かけて5倍、10倍の株価になることもあります。また、配当という果実も受けられます。
しかし、これは1億円保有しているような金持ちの投資方法であり、われわれ零細投資家がこの方法をとったのでは、「投資資金」が回収できません。「金持ちの投資」で「貧者」は金持ちになれません。そんな悠長な投資姿勢をとっているようでは、最初から負けているのと同じなのです。
つまり言いたいのは、「投資」は個人個人のオーダーメイドで行うべきであり、投資資金が巨額な投資家の「投資手法」が、必ずしも零細投資家にとって有効であるとは言えないということです。貧者にとって大事なのは「株式の確保」ではありません。「資金の確保」です。
投資資金が多くない人は塩漬けをしてはいけない
よく含み損があるために、長いこと株式を「塩漬け」にしている投資家もみかけます。これも、金持ちならばそうしてもいいでしょう。しかし、貧者はそうするべきではありません。損失を怖がらず、一刻も早く投資資金として回収し、生き金に戻して新たな投資に向けるべきなのです。
しかし、意思を持って塩漬け株を売却するのは、勇気のいることです。私が提唱する投資法であれば、機械的な投資なので、意思を持って塩漬け株を売るといったことも一切起きません。とにかく、いかに合理的に「投資資金を確保」していくかということだけを考えて、投資をしていくのが私の提唱する貧者の投資方法です。
「投資本」の常識は、個人投資家には通用しない
ちまたには、数多くの「投資本」が溢れています。
「〇〇投資顧問元運用担当者『株式投資はこうして行う』」
「〇〇銀行OB『資産は投資信託で増やしなさい』」
「経済評論家『株式投資は、長期保有』」
などなどです。いずれも「儲けたい」「このままではいけない」という人々の「向上心」を刺激しますが、果たして、実効性はあるのでしょうか?
「元・投資信託運用者」「経済評論家」「銀行OB」の方々は自身の資金で運用するという考えで執筆されていないと思います。
投資資金の心配がない「投資信託」の運用、インサイダー取引規制などで株式投資ができない「銀行や証券会社の社員」。経済の大きな流れには精通していても、個別株の動きには無関心な「経済評論家」などの方々の意見が、個人投資家の「投資戦略」と合致しているはずがありません。
こうした方々が、「BUY&HOLD」「長期投資」といった手法を説きますが、そのとおりにしていては、時間も足りなければ、資金も足りません。とにかく、まずは、こうした手法がよいという既成概念を取り外してください。
長期投資は「インフレ」が前提
長期投資を標榜する人たちの「理論」はただひとつです。経済は「インフレ」を基調としています。経済が「インフレ」で継続していれば、「お金」の価値は逓減(ていげん)していき「もの」の価値は増加していきます。「株式」は「もの」の代表選手でもあります。長期保有をしていれば、経済が「インフレ」とともに拡大して「株式」の価値も増加していく、ということです。
しかし、この長年信頼されてきた「理屈」は、日本の長い「デフレ」経済下では広く実現してはいません。日本が、ようやく「デフレ」から抜け出し、「インフレ」に転じたことで、「長期保有」の有効性が復活したと考えるべきなのです。
長く続いた「デフレ」時代に「インフレ」を前提とする「長期保有」だけを推奨してきた人たちは、本当に「投資」で「資産を増やす」ということを真剣に考えていたのか疑問です。時代の変化、社会の変化、経済の変化を考えない「無責任」なコメントだとは思いませんか?
「貧者」には、「貧者専用」の「長期投資」があるということを覚えておいてください。
