年金事務所で明らかになった「眠ったままの年金」
担当者は、タカシさんの年金記録を確認するなかで、次のように言いました。
「『基金代行額』の記録がありますね。もし企業年金を請求されていなければ、年金が増えるかもしれませんよ」
タカシさんは思わず聞き返します。
「基金代行額? なんですかそれ?」
基金代行額とは、厚生年金基金や確定給付年金といった企業年金に加入していた場合に、年金記録に記載されるものです。請求したかどうか尋ねられたタカシさんは、戸惑いながら「請求した覚えはありません」と答えました。
「転居などで請求書が届いていない可能性もあります。一度、企業年金連合会に確認してみてください」
タカシさんは言われたとおり、すぐに企業年金連合会に問い合わせました。
問い合わせの結果…
タカシさんはたしかに、過去に厚生年金基金へ加入していたことが判明。その後すぐに手続きを行った結果、月1万5,000円ほどの企業年金を受け取れることになったのです。
思いがけない年金の増額に、タカシさんはほっとひと安心。これで、毎月3万円の赤字は1万5,000円に縮小します。
「急いで働くことはないかもしれないな。娘の体調も少しずつよくなっているし、もう少し様子を見よう」
タカシさんは今後の生活に、少しだけ明るい兆しが見えました。
企業年金は申請しなければ受け取れない
繰り返しになりますが、企業年金は原則として、申請しなければ受け取ることができません。冒頭で紹介したとおり、請求手続が行われていない人は100万人を超えており、気づかないまま受給の機会を逃している人も多いのが現実です。
タカシさんも、年金事務所を訪れるまでは、自身が企業年金の対象であることに気づいていませんでした。もしあのとき確認していなければ、月1万5,000円の年金を受け取ることなく過ごしていた可能性もあります。
年金は「自動的にもらえるもの」と考えがちですが、すべてがそうとは限りません。特に企業年金については、「自分がどの制度に加入していたのか」「いくら受け取れる可能性があるのか」を、自分で確認しておくことが重要です。
辻本 剛士
神戸・辻本FP合同会社
代表/CFP
