今回は、満員電車内での“ひとつの行動”が、その場の空気を変えたという2人のエピソードを紹介する。
◆立っている人の前で“眠るふり”

4人掛けの座席の端に座る男性の隣には、大きなリュックが置かれていた。
「立っている人が何人もいるのに、堂々と荷物が置かれていました」
男性は目を閉じており、眠っているのか、それとも眠るふりをしているのかはわからなかった。ただ、荷物をどかす様子はなかったようだ。
「トラブルになるのは避けたかったので、声をかけるかどうか迷いました」
それでも、川上さんは勇気を出して声をかけた。
「すみません、荷物を少し詰めていただけますか?」
男性は一瞬、川上さんのほうを見たあと、無言のままリュックを膝の上に移した。
◆「ありがとうございます」と言われた瞬間
空いた席の前には、“ヘルプマーク”をつけた女性が立っていた、顔色が悪く、吊り革を握る手にも力が入っているように見えたという。川上さんは女性に、「どうぞ」と声をかけた。女性は少し驚いたあと、「ありがとうございます」と言って小さく会釈をして座った。
「声をかけたときは緊張しました。でも、『ありがとうございます』のひと言で報われた気がしました」
荷物を座席に置くこと自体が、必ずしも悪いとは思わない。ただし、「周囲の状況を見れば、取るべき行動は変わるはずだ」と川上さんは話した。

