◆突然距離を詰めてきた白バン

「私は免許をもっていないので、運転は母に任せていました。目的地までは30分くらいで、普通のドライブ感覚で走っていたんです」
走り出して20分ほど経った頃、後方を走っていた白いバンが、急に距離を詰めてきたという。
「気のせいかと思っていたんですけど、どんどん車間が近くなってきました。蛇行しながらピッタリついてきたので、『これは“あおり運転”だ』と気づきました」
その道は、田んぼや雑木林が広がる県道。交通量はそれほど多くなく、周囲には農家の家が点在するような場所だ。
「私は、内心ドキドキしていたんですけど、母は気にする様子もなく、普通に会話を続けていました」
◆コンビニでショートカットしようとした車の顛末
そのまま走り続けていると、交差点手前の左側にコンビニが見えてきた。大型トラックも止められる広い駐車場のある店舗だ。そのコンビニの隣にある信号が赤に変わり、車は停止した。
「その信号は、結構長いんです。私も『まだ青にならないかな』と思いながら待っていました」
すると突然、後ろにいた白いバンが動き出した。左折してコンビニの駐車場に入り、そのままショートカットして道路に出ようとしたのだ。
「信号待ちがイヤだったんだと思います。すごい勢いでコンビニに入って行きました」
しかし、反対車線の信号は青。交通の流れは途切れず、白いバンはなかなか左折できなかったようだ。
やがてこちらの信号が青になり、田中さんたちの車は先に交差点を曲がった。結果、ショートカットを試みた白いバンは、かえって後ろに取り残されるかたちになった。
「さっきまで乱暴な運転だったのに、気づいたら大人しくなっていましたね」
バックミラーでその様子を見ながら、田中さんは少しだけ肩の力が抜けたと振り返る。
「急いでいたはずなのに、結果的には私たちよりずっと後ろになっていて……。因果応報ってこういうことなのかなと思いました」
<取材・文/chimi86>
【chimi86】
2016年よりライター活動を開始。出版社にて書籍コーディネーターなども経験。趣味は読書、ミュージカル、舞台鑑賞、スポーツ観戦、カフェ。

