◆今でも「新しい薬に興味がある」
感染症への向き合い方も印象的だ。これまでインフルエンザや新型コロナに罹患したことはなく、パンデミック期も現場に立ち続けた。「マスクはしていましたが、怖いと思ったことは一度もないですね」
対策は怠らない。しかし、過度に恐れない。「自分にできることをやるだけ」という姿勢は一貫している。
そして今も学びは続く。新薬、特に抗がん剤への関心は尽きない。「新しい薬には興味があります」と語る。その動機は、仕事というよりも自然な好奇心だ。
長く現役でいる秘訣や現役世代へのアドバイスを求めても「それぞれが自分で考えること」と控えめに答える。今後の目標も聞いてみた。
「特別な目標はないです。健康で動けるうちはやる。それだけです」
世界最高齢の現役薬剤師を目指すわけではない。ただ、自分にできることを続ける。その積み重ねが「現役92歳」という現在につながっている。何かを成し遂げようと力むのではなく、流れの中で最善を尽くす。その姿は、中国の古典『老子』が説く「無為自然」を体現しているかのようだ。星さんの生きざまは、現代の複雑な生き方や働き方に大きな示唆を与えてくれるはずだ。
<取材・文/中野 龍>
【中野 龍】
1980年東京生まれ。毎日新聞「キャンパる」学生記者、化学工業日報記者などを経てフリーランス。通信社で俳優インタビューを担当するほか、ウェブメディア、週刊誌等に寄稿

