まだまだある…引っ越し後の後悔ポイント
また、知り合いの少ないエリアかつマンションということで、引っ越し前は当たり前にあった「ご近所づきあい」が消滅。人と話す機会が極端に減った夫婦は外出が億劫になり、気づけば家にこもりがちになってしまいました。
夫婦が引っ越しを後悔した「最大の誤算」
そして、二人が引っ越しを後悔したもっとも大きな理由は、最近子どもが生まれた次女家族の存在です。
夫婦がマンションに引っ越してから約2年が経ったころ、次女夫婦に待望の第一子が誕生しました。
次女夫婦は共働きということもあり、夫婦は「いつでも頼っていいからね」とサポートを申し出ます。すると早速、次女家族が夫婦の家の近くに引っ越してきました。
当初は「気軽に孫を可愛がることができる」と喜んでいた夫婦でしたが、孫の世話を頼まれる機会が増え、最近では毎日クタクタです。2LDKの住まいでは手狭で、落ち着ける時間や空間がなくなってしまいました。
「いつもなにかに追われている気がして、ずっと疲れている……こんなことなら引っ越しなんてしなきゃよかった」
夫婦は「前のようにのんびり暮らしたい」と再度の住み替えも検討しているものの、資金面の不安に加えて、70歳という年齢による気力や体力の衰えも感じており、なかなか重い腰が上がらないということでした。
老後の住み替えで後悔しないために
今回紹介した夫婦のように、「資金はあったのに、住み替え後の満足度が思ったほど高くない」というケースは珍しくありません。
こうした失敗を避けるためには、実際に引っ越す前に、次のポイントを整理しておくことが重要です。
■「ランニングコスト」の増加を見込んでキャッシュフロー表を作る
マンションを現金で購入すれば住宅ローンはありませんが、管理費や修繕積立金といった「ランニングコスト」は一生かかり続けます。また、管理費・修繕積立金は、入居当初は低めに設定されていることも多く、段階的に値上げされる可能性が高い点も見落とせません。
こうした将来の負担増を踏まえ、キャッシュフロー表で長期的な資金計画を確認しておく必要があります。
■生活の質を「前期」と「後期」に分けて考える
厚生労働省「健康寿命の令和4年値について」によると、男女の「健康寿命」と「平均寿命」は下記のとおりです。
■健康寿命
・男性:72歳
・女性:75歳
■平均寿命
・男性:81歳
・女性:87歳
健康寿命までを「前期」、その後、医療や介護が必要になる時期を「後期」と位置づけると、前期と後期では住まいに求める条件が大きく変わるのではないでしょうか。
前期はたしかに利便性が優先されますが、後期はバリアフリー環境や病院の近さなど、医療や介護へのアクセスのしやすさが優先されます。
■老後資金の使い道は分散させる
テルオさん夫婦は、年齢的な理由と潤沢な資金があったことから、住宅ローンを組まずにマンションを購入しました。しかしその結果、手元資金を大きく減らすことになりました。
順調に生活できれば問題はありませんが、健康寿命を過ぎた「後期」には、医療費や介護費が増えるリスクが高まります。
そのため、定年後に住宅を購入する際は、老後資産の総額から「生涯の生活費」と「予備費(1,000万円程度)」を確保したうえで、購入予算を決めることが重要です。
定年後の住み替えを検討する際には、気に入った住まいを選ぶだけでなく、「老後の生活に必要なお金をどれだけ手元に残しておくか」を優先することで、理想と現実のギャップを埋めることができるでしょう。
山﨑 裕佳子
FP事務所MIRAI
代表
