
都市の経済成長を占う指標として、「ルイ・ヴィトン」の店舗動向が海外投資家や富裕層から注目を集めています。運営元のLVMHは、富裕層に特化して利益を稼ぐビジネスモデルを確立しており、その合理的でシビアな立地戦略は地域の成長性を測る試金石となります。本記事では、高橋克英氏の著書『超富裕層に「おもてなし」はいらない』(講談社)より一部を抜粋・編集し、ルイ・ヴィトンの店舗撤退が示唆する「勝ち組都市・負け組都市」の見分け方を解説します。
富裕層に特化し「値上げで稼ぐ」LVMHのビジネスモデル
日本人にも大人気のルイ・ヴィトンは、世界最大の高級ブランド複合企業のLVMHの一ブランド部門だ。LVMHは、「ルイ・ヴィトン」の他、「ディオール」「セリーヌ」「ティファニー」「ブルガリ」「ウブロ」「リモワ」、そして「ドン ペリニヨン」に「ヘネシー」など現在75もの高級ブランドを有する。
各ブランドは、①ファッション&レザーグッズ、②ワイン&スピリッツ、③香水&化粧品、④時計&ジュエリーなど6つの部門にバランスよく配置されている。地域別売上高も、本拠地のフランスを含む欧州、米国、アジアとバランスが取れている。
LVMHのトップは世界一、二を争う富豪でもあるベルナール・アルノー会長兼CEOだ。事業と地域の分散とクロスセリングに強みがあり、個々の高級ブランドの独立色が強い。購買層に同じグループと意識させないような戦略も特徴だ。
世界的なカネ余りの時代には富裕層の数がどんどん増え、彼らは更に富を蓄えていく。高級ブランドは安売りも大量生産・大量出店も不要で、むしろ供給量を絞り「値段が高いことに価値がある」ことを前提にしたビジネスを展開し、毎年のように値上げをして利益を稼ぐ。
こうした①富裕層に特化、②世界的ブランドを持ち、③事業は多角化、④値上げで増収増益、というビジネスモデルが確立できている日本企業は見当たらない。
LVMHが他の追随を許さない「ファッション帝国」であることを差し引いても、参考になる部分はあるだろう。
海外投資家も注視する「ルイ・ヴィトンの立地戦略」
ルイ・ヴィトンに代表される外資系ラグジュアリーブランドは、直営店かテナント店契約かどうかにかかわらず、国内外の富裕層やインバウンド動向などを踏まえ、単純にビジネスとして採算がとれるのか、成長性はあるのか、ブランドイメージの向上に貢献するのか、といった合理的な観点から立地や投資先が選ばれている。
しがらみや先入観がなく、オーナー企業かつ上場企業でもあるので、意思決定も迅速だ。このため、ルイ・ヴィトンがどの都市のどの地に店舗を構えているか、または撤退したかは、そのエリアの成長性をうかがううえで重要な試金石になる。
実際に、競合他社だけでなく、海外の富裕層や投資家も、日本の不動産投資や事業投資における可否判断材料として、ルイ・ヴィトンの動向を注視している。
