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皇室史家が語る皇族養子案の核心と「絶対に超えてはならない一線」/倉山満

皇室史家が語る皇族養子案の核心と「絶対に超えてはならない一線」/倉山満

◆血がつながっていれば良いのではない

皇統に属する男系男子と言っても、血がつながっていれば良いのではない。たとえば、近衛文麿は後陽成天皇十二世孫の男系男子である。同じように西園寺公望は東山天皇七世孫なのでもっと近い。しかし、近衛や西園寺が皇族になれるなどとは、誰一人思わないのが常識である。

基本的に皇籍離脱したら、皇族に戻れない。ただ例外はある。特別の御由緒により、いったん臣籍に下っても皇籍復帰した例、子孫が皇籍取得した例はある。

では現在、そのような特別な御由緒があるのは誰か。旧皇族の男系男子孫と呼ばれる方たちだけである。政府は「旧皇族は日本国憲法下でも皇族であった」ことを理由に、その男系男子孫の皇籍取得を可とする。

伏見宮家は皇室に何かあった時に備える家として、室町時代に後花園天皇の勅命により永世御所とされた。その後、近世では永代親王家の一として続き、明治の典憲体制でも皇族だった。だから日本国憲法下でも皇族であった。このような特別な御由緒があるのは、伏見宮家を源流に持つ、いわゆる旧皇族だけである。

さて、現行典範第十五条である。「皇族以外の者及びその子孫は、女子が皇后となる場合及び皇族男子と婚姻する場合を除いては、皇族となることがない。」とある。「できない」ではなく「ない」である。女性は結婚により皇族になれるが、一般人の男はなれない。これが皇室の掟だ。

皇籍取得は常例ではない。例外中の例外の存在である旧皇族を、一般化できるか。典範本文に書き込むなら、但し書きにするしかない。むしろ本来ならば、特措法でやる話だ。

間違っても「一般人の男子が皇族になれるようにすること」のような書き方をしたら、どこで独り歩きするかわからない。

一案もどこまで考えているのか。条文としては、「天皇皇族以外と結婚したら皇籍離脱」と定めた典範第十二条を変えることになる。皇室に残れるように選択肢を増やすだけであるが、従来通り皇室を出るのも選択肢とする方針のようだ。

◆一般男性を絶対に皇族にしてはならない

ただ、配偶者がどのような方かで、分岐がある。

実は、内親王殿下と旧皇族の男系男子孫の方がご結婚されれば、現行典範第十二条改正どころか、養子案も不要である。極端な話、お相手が決まってから、皇籍取得を可能とする特措法でも構わない。

問題は、お相手が一般人の男子の場合に、皇籍を残す場合である。これは先例が多々あり、政府は皇女和宮をあげる。夫は将軍徳川家茂。徳川将軍は代々大臣であったので、皇族よりも宮中席次は上で、いわば准皇族である。ただし、皇族の形式と皇位継承権だけはなかった。これは徳川以前の歴代権力者も同じ。

内親王殿下が結婚後も皇室に残りお相手が一般人の場合、絶対に皇族にしてはならない。

皇族が減っているから、誰でも皇族にしてしまえなどの暴論があるが、パンピーの男を皇族にして事が済むなら、誰も苦労しない。日本の歴史を全否定する気か?

世の中に勘違いがあって、女性皇族の配偶者を皇族にしたらその子が天皇になり女系天皇につながるから危険だとのヌルイ論があるが、違う。

日本の歴史において、いかなる権力者も皇族にだけはなれなかった。ましてや天皇に。これは、超えてはならない絶対の一線。皇室を守る掟である。だから、いかなる妥協をしてもならないのだ。

政界の大勢は良識的だが、まだまだ油断はできない。

【倉山 満】
皇室史家。憲政史研究家。1973年、香川県生まれ。救国シンクタンク理事長兼所長。中央大学文学部史学科を卒業後、同大学院博士前期課程修了。在学中から’15年まで、国士舘大学日本政教研究所非常勤職員を務める。現在は、「倉山塾」塾長、ネット放送局「チャンネルくらら」などを主宰。著書に『13歳からの「くにまもり」』など多数。ベストセラー「嘘だらけシリーズ」の最新作『噓だらけの日本近世史』が2月28日より発売
配信元: 日刊SPA!

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