月24万円の請求書
特養の入居待ちが続くなか、背に腹は代えられず入居させた「民間介護付有料老人ホーム」の費用は月額24万円。母の年金12万円を差し引いた、月12万円の赤字。これを埋めるのは、母の口座の1,500万円です。
「1,500万円なんて、月12万円ずつ切り崩せば10年で消えます。母が100歳まで生きれば、私の貯金を崩さなければなりません。非課税世帯になれば月数万円で済むと皮算用していた自分を殴りたい」
さらに追い打ちをかけたのは、安易な世帯分離が招いた「手続きの煩雑化」と、家族としての「一体的な家計管理の喪失」でした。
今回は母の資産額で「補足給付」が対象外となりましたが、もし世帯分離をせず同一世帯のまま母が非課税、息子が課税であった場合、介護保険料やサービス利用料の「世帯合算での上限額」の判定において、かえって一括管理したほうが還付を受けやすいケースもあります。ユウスケさんの場合、形式上の「住民税ゼロ」という記号に固執するあまり、制度の全体像を見失っていたのです。
「非課税世帯になんてならなければよかった……」ユウスケさんはいま、激しく後悔しています。
「にわか困窮」が招く、最悪のコストパフォーマンス
ユウスケさんの事例からは、セーフティネットの本来の境界線を無視したリスクがみえてきます。
〇「資産」は嘘をつけない:高齢者世帯の資産保有額は二極化しています。国は限られた財源を「本当になにもない層」に集中させるため、マイナンバー等を活用した資産調査を厳格化しています。
〇「得する制度」を見誤る:年数万円の給付金のために、月十数万円の補助(補足給付)を失うリスクを冒す必要はありません。
〇「生活防衛」の履き違え:本当の防衛とは、制度を裏口から利用することではなく、正当な枠組みのなかで「いつ、いくら必要か」を直視することでしょう。
いま、あなたの目の前にある「お得な制度」は、本当にあなたのために用意された椅子でしょうか? その椅子に座ると、あとから別の請求書が届くかもしれません。
