◆記憶力が落ちる、認知症リスクが高まる……寝不足がもたらす副作用
寝不足だと脳が正常に活動できなくなるため、物事を思い出す機能が低下します。脳は深く眠っている間に記憶を定着させるため、睡眠時間が短く、深く眠る時間が少ない人は、そのぶん記憶を定着させる時間が減り、結果的に記憶力が低下してしまうのです。睡眠不足が脳に悪影響をもたらす研究は多数存在し、国立精神・神経医療研究センターの元村らが行った実験では、睡眠不足時には、ネガティブな情動刺激に対して、感情の起爆スイッチとも言える脳の扁桃体と呼ばれる部位の活動量が増大することが明らかになっています。
健康な成人男性14人を対象に、1日8時間睡眠を5日間と1日4時間睡眠を5日間の両方を体験してもらい、そのうえでfMRIという装置を用いて脳活動の変化を観察したところ、短期間の睡眠不足でも気もちが不安定になりやすくなり、寝ていないときにネガティブな情報を受けとると、いつも以上に精神的に落ち込んでしまうことがわかりました。
また、アルツハイマー型認知症の原因物質であるアミロイドβというタンパク質は、睡眠中に脳の血管から脳外へ排出されていきます。そのため、睡眠時間が足りないと、アミロイドβが脳に蓄積され、認知症リスクが高くなってしまうとも言われています。
◆「寝不足の顔」は「交流したい」と思ってもらいにくい

実験では、実験参加者に十分な睡眠と4時間しか寝ていない睡眠不足をしてもらったうえで、それぞれのすっぴんを撮影しました。そして、そのすっぴん写真を、首都・ストックホルムに住む男女122人に見せ、被験者の魅力、健康状態、眠気、信頼性などの評価をしてもらいました。
その結果、評価した人々は往々にして、4時間しか寝ていない睡眠不足の写真に対して、「魅力が低い」と答えたといいます。しかも、「交流をもちたい」と答える人も少なかったそうです。寝不足の顔はバレてしまうのです。
睡眠不足のリスクは多岐に及びます。睡眠不足によって満腹ホルモンが減少し、食欲が増進するため、肥満のリスクが増加し、糖尿病、高血圧、脳卒中などの生活習慣病の発症リスクも増加すると言われています。
ちなみに、「寝だめ」には効果がないことも科学的に明らかになっています。睡眠の「時間」と「質」こそが重要なのです。
【堀田秀吾】

