ジンジャーエールにカルピスを混ぜながら…「損得勘定vsお守り論」の勝負の行方
席に戻ってきたマサルさんは、再び資料を見ながら、スマホの電卓を叩き始めます。
「でもな、やっぱり早めに入院して給付金もらわな、結局は元を取れへん。なぁ、お姉さん、正直なところどうなん?」
あくまで「元が取れるか」にこだわるマサルさん。保険代理店の女性は少し困ったように、しかしキッパリといいました。
「お兄さん、頑固やなぁ。あのね、保険は『お守り』なんです。単なる数字やなくて、お兄さんがしんどいときに『独りやない』と思えるためのお札みたいなもんですよ。安心を数字だけで割り切るのは、ちょっともったいない気がしますわ」
マサルさんは6杯目の謎のミックスドリンクを楽しみながら、さらに「入院日額」の妥当性について熱弁を振るい始めます。
二人の「損得勘定vs保険お守り論」の攻防戦は、ファミレスの片隅でまだまだ続くのでした。
【1級FPが解説】「損するからこそ意味がある」保険料の半分は経費という現実
マサルさんのように、多くの人が「保険=得をするためのツール」という誤解を抱きがちです。しかし、保険の本質を知れば、その考えがいかに危ういかがわかります。FPの視点から、保険との正しい付き合い方を紐解いていきましょう。
1. 知られざる保険料の「原価」の正体
かつてライフネット生命が業界の慣習を破って公開し、大きな話題になったのが保険料の内訳である「付加保険料(手数料)」の大きさです。
保険料=純保険料(原価)+付加保険料(経費) ・純保険料(原価):将来、誰かの保険金支払いに充てられる、いわば「原価」・付加保険料(経費):保険会社の運営費、広告費、営業職員の報酬等
驚くべきことに、日本の医療保険のなかには、この「付加保険料」が全体の20〜50%に達するものも少なくありません。もしこれが50%なら、5,000円払った瞬間に半分の2,500円は保険会社の経費として消えている計算です。統計的に設計された商品である以上、加入者全体で見れば必ず「払い損」になるのが保険の宿命なのです。
マサルさんが指摘したように、医療保険で元を取れるのは、かなり限定された状況になりがちです。
2. 「元を取る」という発想が招く、小さなリスクへの執着
「入院1日につき5,000円」といった給付金で元を取ろうとするのは、実はあまり合理的ではありません。
なぜなら、2026年現在の日本には「高額療養費制度」という強力な公的保障があるからです。一般的な収入の方であれば、大病をしても月々の自己負担額には上限があります。100万円程度の貯金があれば、医療費だけで人生が破綻することはまず考えられません。
割高な備えに躍起になるよりも、その分を貯金に回すほうが、よほど効率的なのです。
3. 保険が真価を発揮する場所
では、保険は不要なのでしょうか?
答えは「NO」です。保険の真の役割は、「起きたら人生が即座に破綻する巨大なリスク」を他者に肩代わりしてもらうことにあります。
・医療保険(小さなリスク): 数十万円の損。貯金があればカバー可能であり、本来は保険に頼る必要性は低い。 ・自動車保険・賠償責任保険(巨大なリスク):たとえば運転中に事故を起こし、相手を死傷させて数億円の賠償命令が出た場合。これは個人の貯金では到底賄えず、人生は即座に破綻。一生かかっても払いきれない数億円の負債から身を守ること。これこそが、高い手数料を払ってでも民間保険を利用する唯一にして最大の意義です。
