◆長距離G1の不要論が「至極当然の提言」と言えるワケ
多くのファンが拒否反応を示したのが、天皇賞・春を海外G1の“前哨戦”にすべきという意見に対してだった。キングジョージは1951年に創設されたイギリスの由緒あるレースだが、天皇賞は春秋合わせて173回目を迎えるさらに格式の高い伝統レース。距離の関係で有力馬が揃いづらくなっているとはいえ、あまりにも海外競馬を上に、国内競馬を下に見すぎた発言だったともいえるだろう。ただ吉田氏の言い分にも一理あるのも事実だ。もし今年の天皇賞・春が2400mで行われれば、大阪杯2着のメイショウタバルや、クイーンエリザベス2世Cに出走したマスカレードボールあたりが出走に踏み切っていてもおかしくない。
生粋のステイヤーと呼ばれる存在が絶滅危機に瀕しているからこそ、至極当然の提言だったかもしれない。
◆不気味さが漂うヴェルテンベルクは…
そして、その吉田氏だが、今年の天皇賞・春に自身の所有馬を出走させてきた。それが大外8枠15番に収まったヴェルテンベルクだ。今年6歳となった同馬は、昨年2月の時点で1勝クラスを走っていたが、6月にかけて3勝。わずか4か月でオープン入りを果たした。
大器晩成と呼ぶにふさわしいヴェルテンベルクだが、それまで2000m前後の距離を走っていた。ところが、オープン入り後は、松若風馬騎手の進言もあって、長距離レースを使われている。
昨年12月のステイヤーズSで6着、今年2月のダイヤモンドSで4着と馬券圏内には届かなかったものの、スタミナを生かす競馬が板についてきた印象もある。
何より2か月半ぶりの実戦で状態面がピークを迎えている。栗東坂路での最終追い切りは、4ハロン51秒6の猛時計をマーク。馬場や位置取り、展開次第で一発があってもおかしくない雰囲気が漂っている。
天皇賞・春に対する発言が物議を醸した吉田氏の所有馬というだけでも不気味さが漂うヴェルテンベルク。奇しくも注目馬のクロワデュノールと同じキタサンブラックの産駒でもある。今年の天皇賞・春は「こっちのキタサンブラック産駒だった」というオチに期待してみたい。
文/中川大河
【中川大河】
競馬歴30年以上の競馬ライター。競馬ブーム真っただ中の1990年代前半に競馬に出会う。ダビスタの影響で血統好きだが、最近は追い切りとパドックを重視。競馬情報サイト「GJ」にて、過去に400本ほどの記事を執筆。

