
金額の大小はあれど、「愛するわが子や孫のために」と金銭援助をしたことのある人は多いでしょう。しかし、過剰な援助は、自身の家計が苦しくなるだけでなく、わが子にも負担をかける危険性があるため注意が必要です。とある親子の事例をもとに、親子間の金銭援助の危険性と、親の老後資金を守るための具体策をみていきます。
息子の帰省が“憂うつで仕方ない”67歳女性
「母さんひとり暮らしで寂しいでしょ。5月の連休、帰省するから」
息子から届いたLINEを見た瞬間、カズミさん(仮名・67歳)の表情は曇りました。
コウスケさん(仮名・39歳)が、妻と子を連れて3人で帰省するというのです。本来なら、家族そろって顔を見せてくれるのは喜ばしいことのはず。しかし、カズミさんはどうしても素直に喜べません――。
カズミさんは10年前に夫を亡くし、現在は神奈川県郊外にある戸建てで一人暮らしをしています。生活の柱は月13万円の年金ですが、持ち家でローンもなく、特別お金のかかる趣味もないため、年金の範囲で堅実に暮らすことができています。
また、しっかり者のカズミさんは、「自分の面倒は自分でみる」と心に決めており、将来介護が必要な状態になればさっさと介護施設に入るつもりです。年金収入のほかに夫の退職手当金600万円と預金500万円もあり、介護費用の見通しも立っているため、一人で生きていく分には不安はありません。
ところがここ数年、ある理由から、預金が少しずつ目減りしていることに頭を悩ませています。その理由とは、息子一家が帰省するたびに発生する「金銭援助」です。
息子を“勘違い”させた母の行動
ひとり息子のコウスケさんは就職と同時に実家を出て、33歳で結婚。現在は妻と4歳の娘とともに都内で生活しています。
4年前、初孫が誕生した際、カズミさんは嬉しさのあまり「祝い金」を包みました。その額、なんと50万円。息子夫婦にいい顔を見せたかったのか、少し無理をしてしまったのです。
しかし、これがコウスケさんの勘違いを招いたようでした。
父の遺産を相続した母には、金銭的な余裕があるのかもしれない――。
我慢の限界…息子に告げた“冷酷な一言”
以来、息子は長期連休のたびに家族で帰省し、援助をねだるようになったのでした。
「もうすぐ娘の誕生日でさ」「ここの食事代は母さんが出してくれない?」「節句の祝いをしたくて」などと、なにかと理由をつけては遠回しに要求してきます。
いわれるがまま援助を続けているカズミさんですが、自身の年金収入では足りず、毎度預金を取り崩して対応しているのが現状です。ざっと計算してみると、息子一家のために使っている金額は年間30万円ほど。そんな生活が数年続くうちに、1,100万円あったはずの預金は900万円になっていました。
GW初日、カズミさんのお金で外食した帰り、息子が運転する車で実家に到着。お礼の一言もない息子家族に我慢の限界を迎えたカズミさんは、車を降りながらこう言いました。
「あなたたち、渋滞に巻き込まれる前にもう帰ったら?」
