
株や債券などのペーパーアセットは、金融ショック時に巨額の投機マネーによって激しく値動きします。一方、実物資産である「アンティーク・コイン」は、その市場の特殊性から影響を受けにくく、資産の質的分散として機能します。本記事では、田中徹郎氏の著書『資産運用の視点からみた 決定版 アンティーク・コイン投資のすべて』(日本実業出版社)より一部を抜粋・再編集し、アンティーク・コインが金融危機に強い理由を解説します。
巨額の投機マネーが入り込めない…コイン市場が金融危機に強いワケ
まず挙げておきたいのは、市場に入ってくるマネーの性質です。株や債券、為替市場など、いわゆる証券市場にはさまざまなおカネが入ってきます。もちろん実需に基づいたおカネも入ってきますが、その何倍もの投機的なマネーが日々刻々と出入りしています。
投機的なマネーは足が速く、市場参加者の心理は一瞬の間に全体へと伝染します。隣の投機家が売るから自分も売る、自分が売るとさらにそれを見た隣の投機家が売る……。こうやって相場は急速に上下動するものです。
これに対しコインはどうでしょう。
株や債券との最大の違いは、市場の規模が小さく、投機的なおカネが入りにくい点です。株式の時価総額は2京円ほどあると言われていますし、債券はもう少し大きいと考えられています。このような大きな市場は投機的なマネーが入っても、自らのおカネで市場を動かしてしまうことは通常ありません。
コインの市場規模を4兆円と申しましたが、このように狭い市場に投機的なマネーが入るのは難しいでしょう。なぜなら、自らのおカネで相場を動かしてしまうからです。
巨額な投機的なマネーの受け皿として、コイン市場はふさわしくないのです。
一枚一枚状態が違う…金融市場から隔絶されたコインの“特殊性”
投資の難しさという点でもコインは不適格です。株の世界をみると、たとえばソニー株は東京証券取引所に上場していますし、NY市場にもADR(米国預託証券)を上場しています。投資家がどこで買おうがソニー株はソニーの株です。株価は刻々と動きますが、その株価が妥当と考えるならいつでも買うことができるのです。
これに対してコインは一枚一枚状態が違います。鑑定会社の評価は一つの目安にはなりますが、キズやスレ、アタリの箇所や洗浄の度合い、トーンの美しさなども評価の対象になります。この点で先ほどのソニー株の購入とは異質です。
つまり、コインの購入には専門性や目利きが求められ、その点でかなり特殊な金融商品だと言っていいでしょう。このような特殊性によって、コイン市場は株や債券など金融市場から隔絶されており、それが上記のような穏やかな値動きにつながっていると言えるでしょう。
コインが質的な分散対象として機能するのは単なる偶然ではなく、それなりの理由があるのです。
