遺留分をめぐる「よくある相続トラブル」
遺留分をめぐるトラブルには、いくつか典型的なパターンがあります。
1.特定の人物に財産のほとんどを相続させる遺言
まず多いのが、「全財産を妻に相続させる」「事業は長男にすべて継がせる」といった内容の遺言です。
遺言を書く本人としては感謝や期待を込めたつもりでも、なにも受け取れない家族にとっては、自分だけが排除されたように感じられることがあります。その結果、単なる財産の問題にとどまらず、家族間の感情的な対立に発展しやすくなります。
2.生前贈与をめぐる認識のズレ
また、生前贈与をめぐる認識のズレもトラブルの原因になりやすいです。
親としては、住宅購入資金や学費の援助を「すでに渡した分」と考えていても、法律上それが特別受益としてどのように扱われるかは別問題です。贈与なのか貸付金なのか、いくらで評価するのか、記録が残っているかどうかによって結論が変わることもあります。
3.遺言そのものの有効性
さらに、遺言そのものの有効性が争点になるケースもあります。遺言作成時に本人に十分な判断能力があったのか、あるいは誰かが無理に書かせたのではないか、といった点が問題になるのです。もし不正行為が認められれば、その相続人は相続欠格となり、相続する権利を失う可能性があります。
つまり、遺言は内容だけでなく、作成過程まで含めて適切であることが求められます。
相続は「事前準備」が家族を守る
相続トラブルを防ぐために大切なのは、感情論に頼らず、法律上のリスクを見据えて早めに準備することです。
まず必要なのは、自分の相続人が誰になるのかを正確に把握し、それぞれの遺留分を確認することです。誰にどれだけの権利があるのかがわかっていなければ、適切な遺産配分を考えることはできません。
次に、生前贈与をしている場合は、その内容をできるだけ記録として残しておくことが重要です。いつ、誰に、どのくらいの金額を、どのような趣旨で渡したのかを明確にしておけば、後の争いを防ぎやすくなります。口約束や家族の記憶だけに頼ると、相続開始後に認識のズレが表面化しやすくなります。
そして、最終的には専門家に相談しながら、「公正証書遺言」を作成することが望ましいです。公正証書遺言は方式面での不備が起こりにくく、証拠力も高いため、相続対策として非常に有効です。
ただし、形式が整っていても内容が遺留分を大きく侵害していれば安心はできません。税務や法務の専門家と連携しながら、トラブルに発展しにくい設計をすることが大切です。
「うちは大丈夫」が一番キケン…元気なうちに生前対策を
遺留分は、相続において非常に重要なルールです。遺言書があっても無視できない権利であり、これを軽視すると家族間の深刻な対立につながるおそれがあります。特に、相続人が多い家庭や再婚家庭、生前贈与がある家庭では、遺留分を踏まえた慎重な準備が欠かせません。
大切なのは、「うちは大丈夫」と感覚で判断しないことです。相続は法律が絡むことから、想いだけでは乗り切れません。ご自身がしっかり判断できるいまのうちに、相続人を書き出し、財産を整理し、必要であれば専門家に相談するようにしましょう。
岸田 康雄
公認会計士/税理士/行政書士/宅地建物取引士/中小企業診断士/1級ファイナンシャル・プランニング技能士/国際公認投資アナリスト(日本証券アナリスト協会認定)
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