◆経営統合の成功例と失敗例は…
経営統合することで、大量仕入れによる原価の低減、システム統合による店舗運営の効率化、同エリアにおける顧客の食い合いの解消など、事業運営の効率化を図ることができます。大成功した例が東急ハンズで、2025年2月期は32年ぶりに最高益を更新しました。東急ハンズは2022年3月にベイシアグループのカインズに買収されていました。利益改善に貢献したのはオペレーションの効率化で、両社で商品を相互に供給しあう、DXで連携を図ったことが奏功。280店舗以上を運営するカインズのチェーンストアオペレーションを取り込むことで、経営再建に成功しています。東急ハンズは、店ごとに特徴を持たせた独自性に強みがありました。しかし、カインズは買収した際、定番の売場を作って定型化することに意欲を見せていました。各店舗の売場やオペレーションが均質化すると、仕入れの統合や人材交流の面でメリットが生じます。利益水準が向上した背景に、メリットを享受した可能性は大いにあります。今後のポイントは、中長期で顧客を吸い寄せる魅力を維持することができるかどうかでしょう。店舗の固定ファンが離れてしまう懸念があるためです。
ニトリは2021年3月に島忠を完全子会社化し、島忠の「ホームズ宮原店」をリニューアル。同年6月に融合店の「ニトリホームズ宮原店」をオープンしました。ところが次が続かず、島忠のニトリ化は当初想定ほどの展開には至っていません。この店舗はナショナルブランドの多くの商品を、ニトリのプライベートブランドに切り替えたことに特徴がありました。融合店の失敗は、ニトリが買収したホームセンターを、自社商品を並べる棚と考えたことに起因するものでしょう。プライベートブランドは利益率が高く、小売店にとってメリットが高い商品です。一方、顧客が求める機能性やデザイン性を満たしていなければ売れません。別のホームセンターに足を運ぶことになります。性急な同質化は顧客にとっての恩恵が小さくなる可能性があるのです。
◆独自性と効率化の両立という難題が
ジョイフル本田とアークランズの経営統合によって期待できる効果として、商品力の強化と仕入原価の低減を挙げています。プライベートブランド・ナショナルブランドの相互供給によって販売を促進。仕入れを集約、一元化して収益性の向上を図るといいます。ジョイフル本田はプロ向けに強みがあり、ビバホームはDIYや園芸など日曜大工や暮らしに根差した商品展開を得意としています。経営統合によってブランドの同質化が簡単に起こるとは考えられません。一方で、効率化志向が進むと地域密着型の運営形態が少しずつ崩れて店舗ごとの独自性が失われることにもなりかねません。リピート利用が多い郊外のホームセンターの場合、それが客離れを加速させる要因にもなります。
ホームセンターは地域の人々のエンタメ施設としての役割も担っており、買い物の楽しさを提供することも重要な要素の一つになっています。店舗運営の効率化を進めるほど、エンタメ要素が消えることになるでしょう。ホームセンターは経営の難易度が上がっている業態の一つだと言えます。
<TEXT/不破聡>
【不破聡】
フリーライター。大企業から中小企業まで幅広く経営支援を行った経験を活かし、経済や金融に関連する記事を執筆中。得意領域は外食、ホテル、映画・ゲームなどエンターテインメント業界

