運用効率の低い「高コスト・高配当」の商品が喜んで購入される“ゆがんだ構造”
さらに厄介だったのは、高い分配金=「運用が好調である」という誤解を生んでしまったことです。実際には、分配金を多く出すほど、ファンドはその資金を準備するために株式などの資産を売らざるを得ず、運用資産が削られる分、運用効率は低下します。
つまり、高分配であればあるほどファンドにとってはむしろ不利になる構造にもかかわらず、多くの投資家は「たくさん分配金が出る=よいファンド」と考え、「高コスト・高配当」のファンドを喜んで購入してしまう状況が続いていました。
そのため2008年に、私が個人向け投資信託の運用に関わる世界に足を踏み入れたとき、率直に「なぜこれほどまでに高配当で高コストの商品が、当たり前のように選ばれているのだろうか」と驚いたのを今でも覚えています。
“勧められたから買う”が当たり前だった
当時の投資家の中にも、運用会社やその運用哲学まで意識して商品を選んでいた方は、もちろんいました。しかし全体として見ると、多くの投資家は、「どの金融機関の窓口で買ったか」ははっきり覚えていても、「そのファンドを実際に運用しているのがどの運用会社なのか」や、「どのような運用哲学に基づいて資産が運用されているのか」までを強く意識することは、まだ少なかったように思います。
実際、当時の複数の投資家アンケートでは、多くの投資家が「どの銀行や証券会社で購入したか」は覚えている一方で、その投資信託を実際に運用している運用会社の名前までは、ほとんど認識していない、という結果が報告されていました。
つまり、投資家の記憶に残っていたのは「商品を勧めた窓口」であり、「どの運用会社が、どのような思想で運用しているか」は、ほとんど意識されていなかったのです。
つまり、商品の本質よりも販売会社の存在が前面に出ており、ファンドブランドや運用哲学はほとんど知られていなかったのです。その結果、グロソブのように例外的にブランド力を持つ商品を除けば、多くの投資家は「勧められたから買った」という受動的な選択にとどまっていました。
代田 秀雄
三菱UFJアセットマネジメント 前常務
シロタ・ウェルス・アンド・ウェルビーイング・アドバイザーズ 代表
