
アフロヘアにスパンコールが煌めく白スーツという奇抜な出で立ちで、新作映画『ミステリー・アリーナ』の主演を務めた唐沢寿明さん。本作は、深水黎一郎による同名小説が原作で、『20世紀少年』3部作以来15年ぶりに堤幸彦監督と唐沢さんがタッグを組んだミステリー・エンターテインメントです(5月22日より全国公開)。
全国民が熱狂する生放送の推理クイズ番組「ミステリー・アリーナ」。毒舌で解答者を煽って番組を盛り上げるのは、唐沢さん演じる司会者の樺山桃太郎。100億円もの賞金を狙って難攻不落の推理問題に挑戦するのは、頭脳明晰な6人の解答者たち。白熱したバトルが繰り広げられますが、推理を外した者にはおそろしいリスクが課されていて……。
『ミステリー・アリーナ』
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62歳にしてこれまでの自身のイメージを覆すような強烈な役柄に挑んだ唐沢さんにインタビュー。新たな挑戦、若かりし頃の失敗談、そして夫婦円満の秘訣とは? 軽やかで真摯で、どこか少年のような魅力を保ち続ける唐沢さんの楽しいお話をお届けします。
自分で演じていて救いようがないなって。だから役への共感もないです
――今回のような役はこれまであまりなかったと思いますが、役を引き受けようと思った理由は?
唐沢寿明さん(以下、唐沢):原作も読んでいて、樺山がどんな男かはわかっていたので、面白そうだからやってみたいなと。監督も堤さんですから、面白くならないわけがないですよね。僕は若い頃は好青年の役を演じることが多くて、少し年齢が上がっても“嫌なやつに見えたけど実はいい人だった”とか、そういうイメージでした。
――樺山のアフロヘアは唐沢さんの提案だそうですね。どこから思いついたのですか?
唐沢:僕がイメージしたのは、ステージ上で踊りながら叫んでいるようなキャラクターで、踊りといえばアフロでしょう、と。いつの時代だよ、という感じですが、意外と今の若い世代の人々にも刺さるのかな。また、一見して「唐沢が演じているな」とわかるビジュアルだと、視聴者が役とふだんの僕を重ねて観てしまうので、それだとアウトなんですよ。だから今回はこれくらい奇抜な方がすんなり観られるのでは、と思いました。

――こういったインタビューでは、「演じた役とご自身の共通点は?」という質問をすることも多いですが、今回の役はそのような点はなさそうですね。
唐沢:まあ、人格に難があるというか、自分で演じていて救いようがないなって。だから役への共感もないですが、ただ共演者の方々をバカだなんだと罵倒することなんて普段はないですから、面白い体験ではありました。(解答者の一人を演じた)浅野ゆう子さんは、ちょっと怒っていた気がしましたね(笑)。
若い頃、溺れてる役なのに水面から飛び出して監督に怒られました
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――「ミステリー・アリーナ」の挑戦者は失敗すると大変な目に遭いますが、唐沢さんは長いキャリアの中で大変な失敗をしたことがありますか?
唐沢:たくさんありますよ。若い頃、東映アクションクラブにいて、当時は戦争ものの映画が多くて、ちょっと演技ができるエキストラということで僕と何人かが撮影に呼ばれたんです。そうしたら、兵隊の格好をして真冬の海で溺れてくれと言われて。三浦友和さんがボートに乗っていて、その後ろで僕らが溺れているのですが、僕は少しでも画面に映りたいから水面から顔を出していたんです。すると監督に「お前、溺れてるのに飛び出してるやつはいないだろう」と怒られましたね。
――ハードな体験ですね。
唐沢:それで、「すみません。でも、映りたいんです」「またやるつもりか?」「はい、できる限り頑張ります」ってやりとりをしたら、監督がスタッフに「おい、あれ持ってこい」って1キロの砂袋を腰に二つも付けられたんですよ。助監督は優しいから「本番の直前までここにいてやるからボートにつかまってろ」と言ってくれたんですが、僕もまた「不死身なんで大丈夫です」と言ってしまい、助監督が離れた瞬間にズブズブと沈んでいってマジで死ぬかと思いました。
公開後にその映画を観に行きましたけど、僕はどこにも映ってなくて、でも記念にパンフレットを買ったら、そこには出てたの! 叫んでいるようなすごい顔をして。今でもとってありますよ。たまに見ては「こんなこともあったなあ」って(笑)。
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――今では笑い話ですが、少しでも映りたいというガッツがすごいですね。それからキャリアを積まれて現在60代になられましたが、新しいことに挑戦しようという気持ちを持ち続けていることが素晴らしいと思います。
唐沢:やはり新しいことは魅力的なので、やってみたいと思いますね。すべて成功しなくてもいいし、主役じゃなくてもいいんですよ。今回の作品でも、僕が解答者の一人を演じてもよかった。もしそうだったら、どんな風に演じるだろうか、と考えることも楽しいです。
今回の撮影では、解答者役の俳優たちもある意味バチバチでしたから。玉山(鉄二)君はけっこうきっちり演じる方なんですが、するとほかの俳優にもスイッチが入って、「自分はもっと面白くやってやろう」みたいな感じが出るんです。それを僕は司会者の立場から見ているのが楽しかったですね。俳優って、こうじゃなきゃダメだよなって。みんな真面目な人たちだから負けないようにやるんですよ。それが結果として現れるんです。誰一人適当にやっていなくて、自分の存在を印象付けるためにすごく工夫して演じていました。その熱量がすごかったですね。
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――若い世代の俳優さんたちとの共演で気付いたことや、唐沢さんがアドバイスされたことなどはありますか?
唐沢:演技に関しては若かろうが年寄りだろうが俳優はみんなイコールだと思っていますから、僕が何かを言ったところでそれをやるような人はいないんじゃないかな。それに、相手を委縮させてはダメなんです。基本的にはお互いリスペクトすることが大事で、その信頼があるからこそ相手も安心して演じられると思います。
――演技を通じて世代を超えたやり取りができて、その結果、何かが生まれるというのも俳優業の醍醐味でしょうか。
唐沢:そうですね。想像していない結果になったり、相手と喋りながら自分も変わっていったりする瞬間もあるんですよね。(どう演じるかを)家で考えてきたとしても、相手の演技を見てこっちも変わり、相手も変わり、そうやって生まれるものがあるんです。だから脇役が良い作品はヒットするんですよ。僕自身は主役だから目立ちたいという気持ちはなく、みんなで作っていくのが正解だと思っているので、今回の映画ではみなさんのそれぞれ良いところが出ていると思います。

――堤監督とは15年ぶりのお仕事ということで、互いに変わらないなとか丸くなったな、などと思われたことはありますか?
唐沢:堤監督もこうやってチャレンジし続けているでしょ、僕もチャレンジし続けているから、そういう意味では一緒です。お互い年をとったけどね。堤さんはご自分ではもう70代だからとおっしゃるけれど、まだまだ撮ったほうがいいと思う。普通は70代でこんな突飛な作品を作れないよね。もちろん突飛ではない作品も作れる方だから、次は普通の作品でご一緒したいです。

