◆消えたギャラ、消えた説明
――刑事もしくは民事で訴えようとは思いませんでしたか?天川:民事で争っている女優もいたんですけど、秘密をネットに書き込まれたり、晒されたりしていたみたいです。そういう話をいろいろ踏まえた上で、無難な形にしておこうかなと思ったんです。
――弁護士には相談したんですか?
天川:相談しました。でも、個人事業主契約だったり業務委託契約だったり、いろいろあると思うんですけど、事務所との契約書自体がなかったんです。ずっと「契約書を作ってほしいです」ってお願いしていたんですけど、結局最後まで作ってもらえなかったんです。
――まだ「AV新法」もなかった時代ですからね。まあ、それ以前の問題ですけど。
天川:結局、のらりくらりとやらないといけない部分もあって。これ以上言うと「めんどくさいやつだな」って思われそうだな、とか、「これ以上は相手の気分を害しそうだな」とか、そういう空気を見ながらやっていたんです。
――お金を貸した方が立場が弱くなる心理に似ていますね。
天川:お互いの合意形成がないと契約書って結べないので、どれだけ「自分の立場を守るために契約書が欲しいです」と伝えても、こちらは事務所に生殺与奪の権利を握られている状態なんですよね。ギャラも向こうが管理しているし、権利を主張しすぎると「ちょっと扱いづらい子だな」って見られてしまう。だから、実際には言えることも、できることも限られていて、じゃあ「問題提起しよう」「動こう」と思っても、その頃にはもう事務所がなくなっていたりして、「はいはい」で終わってしまうんです。結局、かなりの人が泣き寝入り状態でした。
――過去のこととはいえ、勇気ある告白ありがとうございました。
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今回のインタビューで語られたのは、単なるギャラの未払いというトラブルではなく、管理という名目のもとで、個人の生活や判断が少しずつ制限されていく過程そのものだった。
天川そらさんの証言は、それを自分の特殊な経験として話すものではなく、当時の業界が抱えていた根本的な問題の一部として明確に示しているのだった。
【天川そら】
X:@amakawa_sora_
<取材・文・撮影/神楽坂文人(X:@kagurazakabunji)>
―[天川そら]―
【神楽坂文人】
世界一セクシー女優を取材しているカメラマン、ライター、インタビュアー。元成人誌編集者のため、最後の砦として活躍中。年間イベント取材数300本超え! 年間インタビュー数200本超え! バイクで都内を駆け巡り1日で複数の仕事を受けている。X(旧Twitter):@kagurazakabunji

