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「もう、頼ってこないで」LINE一通で終わった親子の45年…年金月12万円・72歳女性、時計の針の音だけが響く『一人ぼっちの夕食』。「息子がすべて」だった母親が、最後に悟った〈残酷な答え〉【FPが解説】

「もう、頼ってこないで」LINE一通で終わった親子の45年…年金月12万円・72歳女性、時計の針の音だけが響く『一人ぼっちの夕食』。「息子がすべて」だった母親が、最後に悟った〈残酷な答え〉【FPが解説】

高齢者の一人暮らしが急増する現代、シニア世代が直面するのは経済的な困窮だけではありません。なかには、人間関係を「子ども一人」に集中させてしまうことがトラブルとなるケースも。先日、72歳の女性が、FPである波多勇気氏の波多FP事務所を訪ねてきました。女性は、別居する結婚した息子との関係に絶望していて――。※紹介する事例は、相談者より許可を得て、プライバシー保護の観点から相談者の個人情報および相談内容を一部変更して記事化しています。

息子のためだけに生きてきた72歳女性

相談にやってきたのは、神奈川県在住の田中綾子さん(仮名/72歳)。淡い色のカーディガンに、丁寧に整えられた白髪。落ち着いた所作で深くお辞儀をする姿に、とても上品な印象を持ちました。

「こんな歳になってお恥ずかしいのですが、生活のことで、少し相談に乗っていただきたくて……」

そう切り出した綾子さんは、15年前に夫を病気で亡くし、それからずっと一人で暮らしているとのこと。夫は中堅の建設会社に勤めていたそうです。遺族厚生年金と自身の老齢基礎年金を合わせて、毎月の受給額はおよそ12万円。横浜市内の築30年を超える分譲マンションに、住宅ローンを完済した状態で住んでいます。

けれども管理費、修繕積立金、固定資産税、火災保険、医療保険、そして電気・ガス・水道といった固定費を差し引くと、自由に使えるお金は月3万円ほどしかなく、自身の食費も切り詰めている様子でした。

「主人が亡くなってからは、息子の隆(仮名/45歳)がすべてでした。あの子は東京で会社員をしておりまして、家庭もあるんです。可愛い孫も二人」

そう話す綾子さんの目元には、誇らしさが滲んでいました。中学受験の塾代、大学の学費、就職活動のスーツ代。すべて、自身の生活を後回しにしてでも息子に注ぎ込んできたそうです。

ところが、相談の本題に入った瞬間、綾子さんの表情がふっと曇りました。バッグから取り出したのは、文字の大きさを最大にしたスマートフォン。

「これを、ご覧いただけますでしょうか」

画面に映し出されたLINEのメッセージをみて、筆者はしばらく言葉を失いました。

息子から送られたメッセージ

画面には、息子さんからの短いメッセージが残されていました。

「お母さん、もう、頼ってこないで。こっちはこっちで本当に大変なんだ。悪いけど、連絡すら控えてほしい」

たった三行。それでも、その三行が、綾子さんが30年かけて育んできた親子の関係を、崩すのには十分でした。

「わたくし、いけないことをしてしまったようです……」

詳しく聞くと、そこには息子夫婦とのボタンのかけ違いがあったようです。以前の綾子さんは月に二、三度、息子に電話やLINEを送っていたそうです。「今日は近所の桜が満開でしたよ」「健康診断の結果がよくて安心しました」「孫に会いたいわね」。決して大きな相談事ではなく、本人としては「ささやかな親子の会話」のつもりでした。

しかし、息子は管理職に昇進したばかり。共働きで小学生と中学生の子どもを育てながら、毎日が多忙な様子。息子の妻も仕事と家事で疲弊しきっているとのこと。母親からの何気ないメッセージが、いつしか心の余裕を削る重荷になっていたのかもしれません。

それがここ半年、綾子さんのLINEへの返信がほとんどないことから、行動がエスカレートしてしまったそうです。「息子に会いたい」という寂しさから、事前の連絡なしに手料理を抱えて東京の息子の家を訪れるように……。月3万円ほどの自由に使えるお金のなかから、自宅と東京を往復する交通費やお土産代、食材費を捻出していたため、自身の生活費はさらに圧迫されていたといいます。

さらに、偶然みつけた息子の妻のSNSアカウントの投稿に対し、LINEで直接メッセージを送るようにもなっていました。「隆の顔が疲れているようですが、ちゃんと栄養のあるものを食べさせていますか?」「週末くらい、もっと隆を休ませてあげてくださいね」――。

唯一休める場所である自宅への訪問や、LINEでのアドバイスは、息子の妻にとって大きな精神的負担になっていたようです。妻から「これ以上は体調を崩してしまう」と相談された隆さんは、自分の家庭を守るため、苦渋の決断をせざるを得なかったと推察されます。

ここで、ファイナンシャルプランナーとして客観的な数字をお伝えします。総務省「国勢調査(令和2年)」および内閣府「高齢社会白書(令和7年版)」によれば、65歳以上で一人暮らしをしている女性は約441万人にのぼり、65歳以上女性人口に占める割合は22.1%です。さらに令和32年(2050年)には、この割合が29.3%まで上昇すると推計されています。

年金額についても触れておきます。厚生労働省「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によれば、厚生年金を受給されている女性の平均年金月額は10万7,200円。綾子さんの12万円は、平均をわずかに上回る水準です。決して恵まれていないわけではない、けれども豊かでもない。多くの人にとって、まさに「自分事」として感じられる金額ではないでしょうか。

「わたくし、あの子のためにと思って自分のことはずっと後回しにしてきました。でも、もしかすると、自分の人生を息子に背負わせていただけだったのかもしれません」

ハンカチを握りしめながら、綾子さんは静かにそう呟きました。夕食はいつも一人。テレビをつけても、話しかけてくれる相手はいません。聞こえてくるのは、リビングの掛け時計の針の音だけだと心痛を語ります。

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