静かにほどけていく、心の輪郭
今回の街歩きではたくさんのお店を巡りましたが、特に印象に残ったのが「gururi」です。
こちらは、女性の感性にやさしく寄り添う雑貨や本、そして居心地のよいギャラリーがひとつになった空間。ロゴにも猫が描かれていて、ほっこりします。オーナーさんご自身も猫と暮らしていると聞き、そのやわらかな空気の理由に納得しました。手に取った『gururiのぐるり』は、この場所の余韻をそのまま持ち帰るような一冊。現在の店舗は4月26日までで、7月には近くに移転し再オープン予定とのこと。その先の時間にも、きっと同じように穏やかな空気が流れているのでしょう。
「ひるねこBOOKS」では、静かに本と向き合う時間に身をゆだね、10周年記念誌と猫のエコバッグを選びました。
そして「COUZT CAFE」でのランチ。しっかりとした味わいの食事が、歩いてきた時間をやさしく受け止めてくれるようで、自然と肩の力が抜けていきます。歩くこと、選ぶこと、立ち止まること。そのひとつひとつが、知らないうちに心をやわらかく整えてくれていました。
会えなくても、そこにあるもの
今回の散策で意外だったのは、実際の猫には一度も出会わなかったこと。
それなのに、「いなかった。残念……」とはまったく感じなかったのです。看板や雑貨、本の中、そしてふとした路地の空気の中に、確かに猫の気配が漂っている街だったからでしょうか。
姿は見えなくても、ちゃんとそこにいるような感覚。むしろ見えないからこそ想像が広がり、心の中で自由に猫たちが歩き出すような気さえします。猫という存在は、こうして人の記憶や感覚の中に、静かに住み続けているのかもしれません。
猫を探すための散歩ではなく、猫の余韻に包まれる時間。谷根千は、そんな過ごし方をそっと教えてくれる街でした。

