
「終活」をテーマに、ユーモアと愛情を込めて家族の在り方を描き、シニア世代のみならず幅広い世代の共感を呼んだ映画『お終活』シリーズ。その第3弾『お終活3 幸春︕⼈⽣メモリーズ』が29日から公開されます。前作から引き続き出演している藤原紀香さんにインタビュー。
『お終活』シリーズは、熟年夫婦の⼤原真⼀(橋⽖功)と千賀⼦(⾼畑淳⼦)、二人の長女で結婚を控えた亜⽮(剛⼒彩芽)を中心に、誰もが避けて通れない⽼いと別れを、笑いと涙と希望で包み込んだ作品。その決定版となる3作目では、 認知症を患った母(三田佳子)とその息子(小日向文世)を交えながら、より深く家族の絆を描き出します。
藤原さんが演じているのは、夫の真一が通うスナックのママである「カオリ」。出演時間は短いものの、華やかで包容力のある存在感で作品に彩りを添えています。
現在54歳の藤原さんは、「大人のおしゃれ手帖」読者と同世代。そこで、作品を通じて感じた終活への思いや仕事のこと、ポジティブに生きるための気持ちの持ち方、夫婦のこと、美容のことなど、同世代として気になることをうかがいました。
『お終活3 幸春! 人生メモリーズ』© 2026「お終活3」製作委員会
『お終活』出演で感じたのは、人生を閉じる準備ではないということ
――前作から引き続きカオリ役を演じたお気持ちをお聞かせください。
藤原紀香さん(以下、藤原):カオリママは、私自身も出会ってみたいと思うような素敵な女性で、監督が愛情を込めて書いてくださったお役です。ただお酒を出すだけではなく、昭和気質な常連さん方の本音をそっと受け止めて、柔らかなユーモアをたずさえ、温かい言葉で癒やす存在です。
彼女はきっと、人として、これまでに多くの痛みや悲しみを経験してきたのだと思い演じています。パート2を観てくださったファンの方が、「いつか、カオリママの人生も映画で掘ってもらえたらいいなあ」と言ってくれて、嬉しかったです。
『お終活3 幸春! 人生メモリーズ』© 2026「お終活3」製作委員会
――スナックのシーンでは、真一とカオリたちが、墓じまいや散骨について語っています。50代にとっては自分事としては早いけれど、親世代のことで考えている方もいると思います。藤原さんご自身はそういったことについて考えることはありますか?
藤原:正直言うと、この作品に出会うまでは、〝終活〟については、あまり具体的に考えたことがありませんでした。けれども、この映画を通じて、たくさんの知識を得ることができました。
母は70代後半なのですが、おしゃべり好きな母に対して、以前は「また同じことを話している」と、責めるような言い方をしてしまうことがありました。でも、そうではないのだと気づかされました。その思い出が母にとって大好きな記憶であり、いちばん印象に残っていることなのだと。だから「またそこへ一緒に行こう」とか、「その話をもっと広げてみよう」と思えました。受け止める側の心持ちを変えてみると、気づくことがたくさんあるんですよね。
逆に、私が忘れていることを母がたくさん覚えていて、驚くこともあります。今回の作品で認知症の母と息子を演じられた三田佳子さんと小日向文世さんのシーンは、もう愛しかないですよね。素敵なシーンでした。この映画は、人生を閉じる準備ではなく、これからどう生きるかを見つめ直す、そういう時間を持てる素敵な作品だと思います。
矢なんてぐっと引き抜いて、へし折って、前に進んできました

――今日は本作の「スペシャルトークショー」が行われましたが、そこで披露された掛け軸は藤原さんが書かれたということで、文字も立派ですね。
藤原:朝、気持ちを込めて書いてきました。書は習っていますが、あんなに大きな掛け軸には書いたことがなかったので、なかなか緊張しました(笑)。以前、夫が怪我をした後に「人間万事塞翁馬」という言葉を大きめの半紙に書いたのですが、それ以来です。
今回の言葉は、「人生に無駄な時間はない。全ては貴方の物語 byカオリ」でした。お役であるカオリママの格言なのですが、この言葉に、ふむふむとうなずきながら筆を進め、自分も元気になりました!

――あの言葉もそうですが、日頃の藤原さんのインタビューなどを拝見していると、ポジティブな言葉をよく発している印象があります。
藤原:はい、そうですね。年齢を重ねるほど、思い通りにいかないことも多いですよね。若い頃は、勢いや直感で乗り越えられることもありましたが、大人になると、人生は修行なんだと気づかされます。でも、なんだかそれが楽しくて。悩んだり、立ち止まったりする時間すべてが、自分という人間を作ってくれている。そう思うと、それさえ愛おしく感じるようになったんです。すべて自身の物語なんだ、と。
――思い出したのが、かなり昔に読んだ藤原さんのインタビュー記事に、「駆け出しの頃はお金がなくて白米と梅干だけで過ごしていた」という内容があって、それ以来、藤原さんには努力家のイメージを持っています。
藤原:それはネタではなく、リアルな話なのですよ(笑)。本当に、アパートの一階から上がってくる焼肉の香りでお米と梅干しを食べていたことも。関西から上京したときは大変でしたが、いろいろなことを経験できたおかげで、すくすく逞しく育ちました(笑)。
――昔から強くていらっしゃるんですか?
藤原:いえいえ、壁にぶち当たっては気づいてまた走り出し、そしてまた壁にぶち当たって……と、亥年だからでしょうか、七転び八起きみたいな人生でした。
でも、1995年の震災後は常に、生きていることだけで感謝なのだと思えますし、開発途上国の子どもたちとの出会いや、現地で頑張っている日本の方からも多くのことを学び、当たり前のことなどないのだと感じるようになりました。今を生きられていることだけですごいことなのだから、命がある限り、まだまだやらなくてはならないことがある。そう思えるようになったんです。
仕事では、自身が心身ともにエネルギーを注いでいるエンターテインメントの世界で、皆さんにワクワクしていただいたり、幸せな気持ちになっていただける作品を、まだまだ仲間と作り続けたい。そしてライフワークとして、少しでも社会の役に立つことを継続していきたい。そんな思いを胸に、精一杯、命を輝かせていきたいと思っています。
――お仕事やボランティア活動など多くの経験を重ねられて、少しずつ、という感じだったのですね。
藤原:チャレンジにはリスクを伴います。チャリティー活動については、「華やかな世界にいるのにそんなことをして……」とか「売名か?」など、心ない言葉の矢が胸に刺さることもありました。
でも、私の表現したことをちゃんと見てくださっている方は、わかってくださると思いますし、私が伝えたことが光となって、また誰かの心に灯ってくれたなら本望だと思っています。
――藤原さんは、心ない言葉や批判にさらされても、いちいち反論されていなかったように思います。批判に対して行動で示しているところが素敵だと思います。
藤原:ありがとうございます。わかってくださる方がいるだけで十分ですし、そんな攻撃を受けても、経験値も生命力も高いので(笑)、矢なんてぐっと引き抜いて、へし折って、前に進んできました。あ、なんだか、アマゾネスみたいですね(笑)。
反論なんて時間の無駄。人のことを悪く言う事柄にエネルギーを使うより、私は「ありがとう、あなたの運気をいただきました!」と有り難がるタイプなんです。
――タフなアマゾネスの精神、いいですね。日々いろいろなことがあっても、その心の持ち方で乗り越えていきたいです。
藤原:みなさんも職場などで何か言われたりすることがあると思いますが、そんなときは、「また運気をもらったわ、ラッキー」と、感謝しつつ、心に刺さった矢をへし折るつもりでいると、強く楽しく生きられますよ。

