「国立だから安い」では済まなかった教育費の現実
当初、隆志さん夫妻は「国立大学だから、仕送り分は厳しいけれど、私立ほど教育費はかからない」と安心していました。
もともと、隆志さん夫婦が想定していた仕送りは月12万円。家賃7万円と生活費を賄うための最低限の金額です。悠斗さんも飲食店でアルバイトを始めていましたが、昼夜逆転した生活の影響もあり、勤務が長続きしません。シフトを減らしたり欠勤したりするうちに収入は不安定になっていきました。
すると、「今月だけ足りない」「教科書代が必要」「家賃の更新費が払えない」と連絡が入るようになります。そのたびに追加送金を重ねるようになりました。
文部科学省の資料によると、国立大学の年間授業料は標準額で約53万5,800円です。しかし実際には、それ以外の支出が家計を圧迫します。日本学生支援機構の「学生生活調査」によると、大学昼間部の下宿生の学費と学生生活費の年間合計平均は約200万円となっています。
悠斗さんの場合、1回目の留年までの5年間、そして2回目の留年真っ最中の現在までに、すでに1,300万円近い支出に膨れ上がっています。
「4年間の教育費は覚悟していたんです。でも、ここまで長引くとは思わなかった」と、妻の真由美さんはポツリと漏らします。
退職金は1,200万円ほど見込まれていました。しかし、マンションの修繕費や老後の生活資金を考えると、決して安心できる額ではありません。しかも、「本当に今度こそ卒業できるのか、これで支援が終わるのか」という強い不安がつきまとっています。
老後資金と教育費が重なる怖さ
50代後半は、住宅ローンや子どもの教育費が一段落し、老後資金を積み上げやすくなる年代だといわれています。
しかし現実には、そうした見通し通りに進むとは限りません。役職定年による収入減や親の介護、住まいの修繕費など、想定外の支出や環境変化が重なる家庭も少なくないからです。そこに子どもの留年や仕送りの長期化が加わると、老後準備は一気に難しくなります。
特に、年齢を重ねてから子どもを持った家庭では、親の定年と子どもの教育費が重なりやすく、老後準備が遅れるケースも珍しくありません。
佐伯さんの場合は、息子のゲーム依存という問題まで重なりました。もちろん、ゲーム自体が悪いわけではありません。ただ、生活や学業を維持できないほど依存状態になれば、本人だけでなく家族全体の人生設計にも大きな影響を及ぼします。
隆志さん夫妻は、「もう大学なんてやめろ」と言うことも考えました。しかし、せっかく入った有名大学。卒業と中退では、就職先も大きく変わってくるでしょう。結局、2回の留年を許すしかない。そんな状態に陥っていました。
それが結果的に家計を圧迫し、夫婦の老後を危うくしていたのです。
