◆<解説>共働き前提の家計が抱える危うさ
一見すると、世帯年収1200万円という数字は、十分に余裕のある家計に映る。だが実際には、教育費と住宅ローンという二つの大きな固定費を同時に抱えたことで、家計は思っている以上にもろくなる。財務コンサルタントの桜井潤一氏は、こうしたケースは決して珍しくないと話す。「家計が崩れる典型パターンは明確です。共働き前提でギリギリのローンを組み、子どもの成長とともに教育費が増え、さらにどちらかの収入が下がる。これが重なると、一気に余裕がなくなります」
坂口さんのケースは、まさにその典型といえる。共働きであることを前提に住宅を購入し、教育にも十分なお金をかける。順調なうちは成立していても、時短勤務などで収入が下振れした瞬間、一気に家計の緊張が表面化するのだ。
桜井氏は、特に危険なサインとして「ボーナス前提の返済」「貯蓄がほとんどないこと」「教育費のピークを把握していないこと」を挙げる。
「順調な時だけ成立する家計は長く持ちません。大事なのは、うまく回っている時の数字ではなく、収入が落ちた時にも耐えられる設計になっているかどうかです」
◆必要なのは“下振れ”への余白
では、こうした事態を避けるには、どんな“余白”が必要なのか。桜井氏は、事前に確保すべきものは大きく3つあると指摘する。「ひとつは、片働きでも最低限回る設計にしておくこと。もうひとつは、生活費6〜12か月分の貯蓄。そして、教育費のピーク、特に大学時期にどれくらいお金がかかるのかを見える化しておくことです」
さらに住宅購入の段階で、「収入が2割下がっても本当に耐えられるか」を一度シミュレーションしておくべきだという。
「家計は『理想の収入』で組むのではなく、『下振れ前提』で組むことが重要です。何も起きなければそれでいい。でも、何かが起きた時にも崩れない設計こそが、本当の意味で安全な家計です」
教育も住まいも、どちらも家族にとって大切な選択だ。だからこそ、その二つを同時に手に入れようとする時ほど、数字の上の“成立”だけで安心してはいけない。家計に必要なのは、正しさの積み重ねではなく、想定外に耐えられるだけの余白なのだ。

ユニバーサルバンク代表。財務コンサルタント。早稲田大学卒業後、大手銀行に24年間勤務。2020年株式会社ユニバーサルバンク設立。富裕層の資産運用から、数十億の法人融資まで1,000社以上の審査と支援を経験。「銀行を超えた銀行を創る」という思いから2020年独立、「株式会社ユニバーサルバンク」設立。3,000万円以上の自己投資をして起業初年度から年商1億5,000万円のビジネススクールを経営、提供するセミナーも6,000人以上が受講。「真に豊かな人生を送れる人を増やしたい」という想いから、財務×ビジネス×資産形成を融合したReal Wealth®︎プログラムを開発

