子どもたちに「3億円の資産」を隠し続けるわけ
会田さんには高校生と中学生の子どもがいますが、子どもたちには毎朝「行ってきます」と言って会社へ向かう姿を見せています。
「もちろん、働くことは楽じゃないです。でも、“社会と関わりながら生きる”って、大事なことだし、その姿を見せたいと思うんです」
その思いは、会田さんにとって譲れないことです。また、住まいや家電もごく一般的。贅沢を禁止しているわけではなく、家族旅行や外食も楽しみますが、夫婦ともに派手な消費には興味がないのです。
会田さんは実家や自分の資産状況について、妻には伝えていますが、子どもたちには話していません。
「将来、資産を譲る可能性はあるにせよ、子どもに、“うちはお金があるから大丈夫、働かなくても問題ない”とだけは思わせたくない。まずは自立して生きる力を身につけてほしいんです」
その言葉には、父親を見て育った経験と、子どもたちの将来を案じる気持ちがにじみ出ています。
会社員という“普通の身分”には、意外なほどメリットが多い
会田さんが会社員で居続けるのは、現実的なメリットも少なからずあります。
例えば、健康保険です。会社員であれば、毎月の健康保険料は労使折半(会社が半分負担)です。さらに病気やケガで長期間休職したとしても、傷病手当金として給与の約3分の2が最長1年半支給されます。これはリタイアした無職や個人事業主が加入する国民健康保険にはない手厚い保障です。
また、厚生年金に加入し続けることで、将来受け取る老齢年金は基礎年金のみの人に比べて年間で100万円以上の差が出ることも珍しくありません。
さらに、会田さんにとって価値があるのは「社会との関わり」と「精神的な健康」の維持です。昨今ブームとなったFIRE(早期リタイア)ですが、経済的な不安から解放され、自分らしい人生を送る。その生き方に魅力を感じる人も多いでしょう。
ただし、FIREすることだけが目標にならないことが大事で、いざFIREを達成しても、その後に明確な生きがいやコミュニティを持たない人は、時が経つにつれて孤独感を感じたり、生きがいを見出せなくなったりしてしまった、というようなケースもあります。
問題なのは「働かないこと」そのものではなく、社会における自分の「役割」や、何を軸に生きるかなのかもしれません。
