◆ハラスメントがバレた結果…
限界に達した安住さんは、エリアマネージャーが来店した際に密かに相談を持ちかけた。「正直、マネージャーに話しても変わらないと思っていました。話を聞いてくれるだけでもいい。報告した時点では精神的に追い詰められた気持ちで話しかけたんです。ダメ元だったんですが、マネージャーは真摯に耳を傾けてくれました」
会社としてコンプライアンスの重視に力を入れていたことも影響したのか、事態を重く見たマネージャーは、後日、客を装い来店しつつインカムを傍受する秘密調査を実施した。
「何も知らない寺内さんは調査当日も暴走していました。僕への卑猥な罵倒だけでなく、特定の新米スタッフへの執拗なパワハラ発言まで……。嫌がらせの決定的な証拠を、マネージャーはリアルタイムで全て押さえていたんです」
本部の対応は迅速だった。管理責任を放棄していた店長は降格処分となったうえで他店へ異動。絶対的な権力者として振る舞っていた寺内さんは解雇となった。
「解雇を告げられた日の寺内さんは、真っ白な顔で呆然としていました。まさか自分が解雇されるとは思ってもいなかったんだと思います。少し気の毒にも思いましたが、勇気を出して声を上げていなければ、今頃、僕は壊れていたはずです」
寺内さん配下のスタッフの士気は下がったものの、職場の風通しも良くなり、新人も育つようになった。抑圧者が消えた店舗は、ハラスメントが横行していた頃よりも売上が向上した。
<TEXT/和泉太郎>
【和泉太郎】
込み入った話や怖い体験談を収集しているサラリーマンライター。趣味はドキュメンタリー番組を観ることと仏像フィギュア集め

