
「何のために働いているのだろう」と、ふと呆然としてしまう瞬間はありませんか? 収入アップ、仕事の成果、人付き合い、そして充実したプライベート。真面目な人ほど、これらすべてを「もっと良くしなければ」と100点満点を目指して追いかけ、自らを追い詰めてしまいがちです。本記事では、佐野創太氏の著書『70%で働く 「もっと頑張る」から脱出する働き方の思考法』(日経BP)より、事例を交えながら、人間関係に「30%の余白」を作るメリットを明かします。
お金のため、家族のため…「働く理由」は人から評価できないもの
仕事や家事、育児、介護など、目の前のことで手いっぱいになっていると、ふと「なぜここまでして働いているんだろう」と呆然とする瞬間があります。そこで、「よし、やろう」と思ったときに、「もういいや」と投げやりにならないための考え方をご紹介します。それが、「働く理由の棚卸し」です。
多くの場合、働く理由は、大きく次の4つに整理できます。
1.お金:生活のため、将来のため
2.人:同僚や上司、部下、仕事を通じた社会的関係
3.仕事:やりがい、スキル向上、自己表現
4.生活:家庭や趣味、健康、自由な時間
しかし、この4つすべてを「もっとよくしなければ」と追いかけると、心、そして時間的に余裕がなくなっていきます。
「収入をもっと増やさなきゃ」
「人付き合いを広げなきゃ」
「仕事でもっと成果を出さなきゃ」
「生活をもっと充実させなきゃ」
このように考えてしまうからです。もちろん、仕事が順調なときはこの「向上物語」は楽しく、達成感も得られます。しかし、育児や介護などで時間が限られているときや、思い通りに働けないときは、「全部をよりよくしよう」と思うだけで疲れてしまいます。
だからこそ、下り坂や停滞も「自分の働き方の一部」だと受け入れることが大切です。この4つの理由すべてで「100点満点」を目指すのではなく、「すべて70%で100点満点」と考えることが、心と時間の余裕を生み出す鍵です。他人から見たら下り坂や停滞に見えるかもしれません。でも本当は充電かもしれませんし、準備期間かもしれません。他人にとやかく評価できるほど、私たちの働き方は安くありません。
肩の力が抜けたでしょうか。少しでも「そんな考え方もあるのか」と思っていただければ、優先順位があなた仕様に変わっていく準備が整ったということです。
「時間」と「主語」でお金を使う意味を捉え直す
まずは「お金」についてです。「お金は増えればうれしく、減れば不安になる」。ごく自然な感情で、誰もがそう思うでしょう。しかし、その感覚に縛られすぎると、「お金の喜び」はすぐ小さくなります。「お金が好き」と語る相談者さんの多くも、突き詰めると「お金そのもの」以上に「お金がくれる安心」を求めています。
キャリア相談で出会ったフリーランス5年目のGさんはこう話してくれました。
「収入が安定的に増えていないと不安で、休むことも使うことも控えていました。働く喜びは、お金が稼げたときだけ。稼いだお金を使うことは、“安心を減らすこと”に思えて怖かったんです」
Gさんは、「収入は増え続けるべきだ」という物語を生きていました。そこで一緒に、「時間」と「主語」、この2つの観点から考え方を少しずらしてみました。
1.時間:長い目で収入を見ると、お金を減らす「意味」がわかる
一緒に2年分の収入を1カ月ごとに振り返ってみました。「ここで収入が減ってますけど、何かあったんですか?」とお聞きすると「なんだったかな」と忘れていました。メールを見返してもらうと「そうだ、ここで資格を取る講座に通っていたんでした」と思い出せました。
実はGさんは、この「収入が減った月」に「今の働き方は続けられない」と落ち込んでいたのです。でも実際は「将来のための投資」として、収入が減っていただけです。そのため、その後の収入は増やすことができていました。
「直近のお金の増減にとらわれていました。お金を減らすことで得られるものもあるんですね」と自分の選択を後から肯定でき、自信を取り戻していました。
2.主語:「誰と使ったか」で色付けすると、減っていくお金に喜べる
もうひとつ一緒に見直したのはお金を使う「主語」です。支出として減っていくことばかり注目していると「もっと切り詰めなきゃ」と焦るばかりです。
そこで「このお金は誰と使ったのか」を一緒に見ていきました。主語で支出を仕分けます。すると「これは家族と過ごす休日のためのお金。これは友人と出かける旅行のお金ですね」とお金に色付けができるようになりました。「これは何がなんでも必要な経費ですね!」と使ったお金の額を見て、喜んでさえいました。
「お金が減るのは悪。増えるのは善」。一見すると100%正しく見えるこの考え方にも「30%くらいは疑う余地があるのでは」と思って70%で考えてみると、自分を縛る価値観から自由になれます。
本来の私たちは、「お金は楽しく使いたい」はずですから、「増えた」「減った」で働き方の価値まで測らなくていいのです。
