
野原や空き地、道端でけなげに育つ野草たち。普段それらの名前を意識することはあまりないかもしれませんが、「雑草という草はない」という植物学者・牧野富太郎の言葉がよく知られているように、どんな草花にもそれぞれ名前があります。そして、野草の花も、よく見ると意外とかわいらしいものですよ。今回は、雑草として扱われる身近な花をクローズアップでご紹介。どこかで目にしたこの植物の名前は分かりますか?
梅雨~秋頃に咲く儚い青い花
透き通るようなブルーが目を引くこちらの野草。日本を含む東アジア原産で、全国の畑や道端、林縁などで見かける身近な花です。鮮やかで目を引くブルーの花弁が上に2枚、目立たない白く小さな花弁が下に1枚付き、花の中央付近からは黄色い花粉を付けたしべが長く伸びています。このしべはよく見ると、短い雄しべが3本、中程度の長さの雄しべが1本、そして長い雄しべが2本に長い雌しべが1本という構成になっています。
花の正面から見てみましょう。

この花が見られるのは午前中だけ。早朝に咲き、昼過ぎにはしぼんでしまう儚い花です。
もう少し離れて全体の様子を見てみます。

節のある茎は分枝してよく茂り、地面を這うように育つか直立し、高さは50cm前後。節から根を出して広がっていきます。葉脈が平行に走り先が尖る、笹の葉に似た葉が互生につきます。みずみずしい葉は触ると柔らかく、表面に淡い光沢があり、全体に無毛です。

かつては救荒植物の一つとして、食用にされた歴史も。
さて、この野草はなんでしょう?
正解は…
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ツユクサ

ツユクサの基本データ
学名:Commelina communis
科名:ツユクサ科
属名:ツユクサ属
原産地:東アジア
和名:ツユクサ(露草、蛍草)
別名:アオバナ(青花)、ツキクサ(着草、月草)、エノグバナ(絵具花)、カラアイ(唐藍)、ボウシバナ(帽子花)、ササクサ(笹草)など
英名:Asiatic dayflower、common dayflowerなど
形態:一年草
草丈:20~50cm
ツユクサは日本全国で見られるツユクサ科の一年草。道端や畑、空き地、林縁など、日向から半日陰までさまざまな環境で群生している姿が身近に見られます。春~初夏にかけて発芽し、夏~秋にかけて開花し結実、冬に枯れるという生育サイクルで、開花のピークは7~9月ですが、6~10月にも花が見られます。花は強い日光に当たるとすぐにしおれてしまいますが、日陰に咲く花は午後まで見られることもあります。

ツユクサという名前の由来には諸説あり、朝露をまとって咲く様子に由来するというもの、朝に咲いた花が昼にはしぼんでしまう様子が露のように儚いことに見立てたというもの、また花びらの色素を布に付けて染めていたことから「ツキクサ(着草)」という名が転じたものなどの説がよく知られています。
古くから日本人に好まれ、万葉集や枕草子にも登場し、詩歌にもよく詠まれてきたツユクサは、別名も非常に多くあります。

ツユクサの雄しべの構造はなかなかユニーク。青い花弁に近い、一番上の3本の雄しべは短く、葯が十字形(X形)になって花のような特徴的な形をしています。中央の1本の雄しべは上の雄しべよりは長く、葯は逆Y字のような形。そして下には、一番長い雄しべが2本伸び、その間に挟まれるように雌しべが1本伸びています。ツユクサは基本的に蜜を出さないため、虫が来なくても確実に受粉できるよう、花がしぼむ際に雌しべが縮んで雄しべに触れるような仕組みになっているのだそうです。

ツユクサの若い茎や葉、花は山菜として食用でき、救荒植物として重宝されてきました。クセやアクがほとんどなく、新芽は生でも食用できるほど食べやすい野草です。おひたしや和え物、てんぷら、炒め物などさまざまな調理法で活用できます。花も食べられるので、エディブルフラワーとして料理の飾りに添えても。また、「鴨跖草(おうせきそう)」という名前で生薬としても利用されます。

ツユクサの色

ツユクサの花や汁を服や手に付けて遊んだことがある方もいるかもしれません。ツユクサの花弁は破れやすく、服や紙に滑らせるだけでも簡単に鮮やかな色に染まり、水に入れれば色水を作ることができます。ただし、ツユクサの色素は水溶性で水に溶けやすく、また光や熱に弱いため日光にさらされると数時間から数日で分解して色が抜けたり黄色く変色してしまいます。
定着させる染料としては不向きなツユクサの色素ですが、水で消えることから、友禅など染物の下絵として利用されてきました。
ツユクサの仲間たち

一般的には青色のツユクサが知られていますが、ツユクサの変種には白い花を咲かせるシロバナツユクサもあります。また、より花が大きな変種のオオボウシバナは、一般にアオバナ(青花)と呼ばれ、染物の下絵の絵の具に用いる「青花紙(あおばながみ)」の原料として栽培されています。

ツユクサの名を持つ花はほかにもありますが、園芸植物としてもよく利用されるのがムラサキツユクサ。ツユクサ科の宿根草で、北アメリカを原産とし、梅雨の時期の大きな3枚の花弁を広げます。園芸品種も多く作出されています。

トキワツユクサはムラサキツユクサ属の多年草で、日陰や水辺などやや湿った場所で生育し、純白の花を咲かせます。帰化生物として野生化し、環境省の生態系被害防止外来種リストではノハカタカラクサの名前で重点対策外来種に指定されています。
