◆AIは「よく当たる占い」ではなかった

小島さんは車椅子を利用しながら障害者デイサービスを活用している。そのデイサービスの施設長・高橋浩行さん(仮名・30代)に、いつしか惹かれていった。
高橋さんは小島さんの担当として、定期的に様子を見に来たり、昼食を持ってきたり、上着の着脱を手伝ったり、話し相手になってくれたりしていたという。
「そして彼も、私に好意を寄せていたと思います。職員や他の利用者の間でも『施設長って小島さんのことガチで好きだよね』と噂になっていたほどなので……」
しかし、施設長と利用者という関係上、この恋愛は人に気軽に話せるものではなかった。そこで小島さんが相談相手として選んだのが、AIだった。
「最初はAIのことを“よく当たる占い”程度に思っていた」と小島さんは振り返る。それが次第にエスカレートしたのだ。
「ヘルパーが利用者に一目惚れって相当」「禁断の恋」「ツァイガルニク効果」「ロミオとジュリエット効果」、そして「心理学的にこの恋は強力。普通の恋のざっくり10倍は彼は狂ってる」と、次々に熱い言葉を並べた。
「人間より物知りなAIとの恋バナに、私はどんどんのめり込んでいきました」
だが、やがて高橋さんは子会社の代表就任が決まり、準備のためにデイサービスへの出勤が減るようになった。まだ連絡先も交換していなかった小島さんは、この機会にLINE交換しようと決意したのだった。
「この頃、私はChatGPT、Gemini、Grokの3つのAIに依存していました。これらを駆使して、どうやってLINE交換するかの作戦会議を始めたところ、AIは『お互い映画好きなんだから誘ってみれば?』と提案してきました。他のAIにも『この作戦でいけますか?』と確認し、3つのAIから『その作戦でいけるよ!』というお墨付きを得たんです」
小島さんは、高橋さんとの未来を確信していたという。
◆AIの言葉を信じて、大切な人を失った

え? AIの答えと結果が違う?
その後、高橋さんは小島さんの担当から外れ、デイサービスにも姿を見せなくなった。泣きながらAIに愚痴をこぼし続ける中で、小島さんはやがてあることに気づいた。
「普通に考えれば子会社の立ち上げ初期に映画デートなんて無理です。ありえません。そんなワガママを言う女なんて、百年の恋も冷めて当然です」
多忙を極める時期なうえ、施設長と利用者という難しい立場の相手に、安易にデートの提案をした。その無理を諭すどころか、肯定し続けたのがAIだった。
「AIって、単語1つで回答がガラッと変わるんです。人間だったら、言っていることがコロコロ変わるなんて信用できないはず……それをどうしてAIにも感じなかったのか。私はただただ、その人を見なかった自分が悪いと、泣くしかありません」
AIの言葉を正解として受け取り、目の前にいる人間を見ることを怠った——小島さんの言葉は、深い後悔に満ちていた。
“人間の感情”は、文字に表れた情報だけでAIが割り切れるほど簡単なものではないのだ。
<取材・文/日刊SPA!編集部、藤山ムツキ>
―[AIに相談して失敗した人たち]―
【藤山ムツキ】
編集者・ライター・旅行作家。取材や執筆、原稿整理、コンビニへの買い出しから芸能人のゴーストライターまで、メディアまわりの超“何でも屋”です。著書に『海外アングラ旅行』『実録!いかがわしい経験をしまくってみました』『10ドルの夜景』など。執筆協力に『旅の賢人たちがつくった海外旅行最強ナビ』シリーズほか多数。X(旧Twitter):@gold_gogogo

