すべてを整理し終えて選んだ「終の棲家」
崖っぷちで夫婦を救ったのは、近年の不動産価格の上昇でした。かつて7,000万円で購入したタワマンは、約1億円で売却することができたのです。しかし、その売却代金がそのまま老後資金になったわけではありません。
住宅ローンの残債に加え、会社を維持するために個人保証で抱えていた借入金の返済、法人の清算費用などが重くのしかかりました。売却代金の大半はそれらの支払いに消え、最終的に手元に残ったのはわずかなお金だけでした。
そんな2人が終の棲家に選んだのは、家賃4万2,000円の市営団地。間取りは2DK。エレベーターのない4階建ての3階です。老後の生活費を考え、住居費をできるだけ抑えられる住まいを探した結果でした。
「最初は、あまりのギャップに涙が出ました。でもね、住んでみたら信じられないくらい心が軽くなったんです」と奈美子さんは微笑みます。
何より大きいのは、お金の恐怖からの解放でした。住居費が安くなり、月13万円の年金だけでも、慎ましく生活できるように。
「タワマンにいた頃は、デパ地下で高い惣菜を買ったり、高い服を着たりしていました。でも、ここへ来てからは、近くのスーパーの特売チラシを見るのが毎日の楽しみに変わりました。周りの住人も等身大の暮らしをしています。誰も私たちの過去なんて気にしないし、私も誰かと比べる必要がなくなった」
見栄という名の重荷を捨て去り、団地で手に入れた「安らぎの日常」。長尾さん夫婦の幸福な老後は続いていきます。
